研究課題
本研究は,サイボーグ技術(ウェアラブルならびにインサイダブル:医療目的以外で使われる身体装着型ならびに体内埋込型の電子機器)が市場に受け容れられ,広く利用されるための条件を探求することを通じて,企業の技術開発と利用のあり方ならびにマーケティング戦略への示唆を与えると同時に,サイボーグ技術の開発と利用がもたらしうる倫理問題の特質を解明し,技術と人間・組織・社会が共進化する中で「人間の機械化」が進む現代社会における善き人間存在と企業活動,そして善き社会の実現のための政策提言をプロアクティブに行うことを目的とし,これを世界規模の国際/異文化間比較研究として展開する。2020年度は(1)サイボーグ技術に対する消費者の主観的態度の国際比較を行うために,「Qメソドロジー」に基づく調査研究を日本,スペイン,フランスの3カ国において実施し,また(2)日本国内において,脳波を利用して機械操作を行うウェアラブルである「ブレインマシンインターフェース(BMI)」を使ってロボットアームを動かす実験を健常者を被検者として行い,被検者への聞取り調査を通じてBMIの受容性と人間の機械化に対する態度を調査した。これらは,本研究の目的に直接関連する研究活動であり,そこから得られた知見は本研究の進展に大いに貢献するものであった。また,本研究の基礎研究として(3)情報倫理研究における異文化間比較とはどのようなものであるべきなのかについての理論的考察を行った。異文化間比較研究が,往々にして特定の国や地域の文化を固定的なものとして前提してしまうことによって,文化相対主義的な,あるいは自文化中心主義的な発想や主張へと結びついてしまうリスクを有していることを明らかにし,文化の流動的な特徴を示した。このことを通じて,異文化間比較研究として実施されている本研究のアカデミックな健全性を確保するための重要な示唆が得られた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画では,北欧ならびに西欧各国においてサイボーグ技術の開発者と利用者に対する聞取り調査を行う予定であった。しかし,新型コロナウィルス感染症の流行のためにこれを実施することができず,次年度以降に繰り延べすることを余儀なくされた。これについては,2021年9月以降に改めて聞取り調査のスケジュール調整を行い,2022年5月までには聞取り調査を実施して,当初の進捗計画をキャッチアップする予定である。その一方で,2020年度においては,海外共同研究者とのQメソドロジー調査研究や,BMI実験,また異文化間比較研究に関する理論研究などを実施することを通じて,予定していたよりも豊富な研究成果を上げることができた。そのため,全体としてはおおむね順調に進展していると評価できるものと考えられる。
上記のように,当初計画していた北欧ならびに西欧各国における聞取り調査については,2021年度秋以降に時期を繰り延べして必ず実施する予定である。その他の研究活動については,当初の予定を上回るペースで実施し,それに伴って研究成果が上がってきており,このまま研究を進展させていきたい。
新型コロナウィルス感染症の流行のため,国内での学会報告のために必要であると考えていた国内旅費と,北欧ならびに西欧での聞取り調査のための海外旅費をまったく使用しない結果となった。また,対面での研究活動のために必要であると考えていた会議費等についても同様に使用しない結果となった。2021年度の秋以降に,2020年度に予定されていた調査や研究報告,会議を実施する予定である。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件) 備考 (2件)
The Review of Socionetwork Strategies
巻: Online first ページ: unpaged
10.1007/s12626-021-00080-x
10.1007/s12626-021-00077-6
Arias Oliva, M., Pelegrin Borondo, J., Murata, K. and Lara Palma, A. M. (eds.), Societal Challenges in the Smart Society, Logrono: Universidad de La Rioja
巻: Book chapter ページ: 81-92
http://www.isc.meiji.ac.jp/~kmurata/
https://gyoseki1.mind.meiji.ac.jp/mjuhp/KgApp?kyoinId=ymkdyoykggy