研究課題/領域番号 |
20K01921
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
金 雅美 和光大学, 経済経営学部, 教授 (20366967)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オンラインMBA / ビジネススクール / コロナ危機 / MBAホルダー / 海外MBA派遣制度 / グローバル人材育成 / プロフェッショナル人材育成 / アメリカ |
研究実績の概要 |
今回の研究業績は、「第12章 アメリカのオンラインMBAの動向」『現代に問う経済のあり方経営のあり方』話恋大学経済経営学部編 創成社 pp.241ー258 2021年3月9日にまとめている。本章は、アメリカの大学の一部のオンラインMBAの現状を探ることを目的としている。筆者の2011~2020年のアメリカのビジネススクール3校への訪問調査によって、その変遷と現状を明らかにした。そして、今後の日本企業への導入についても、若干の考察を行った。近年ではすでに、マーケットが成熟したアメリカのオンラインMBAであるが、筆者の初期の訪問調査(2011年)からは、比較的初期の成長する姿が伺えた。東海岸にある大学3校を調査した時点では、3校全てで急速な学生数の増加により拡大していた(金、2015)。 さらに本章では、急速な発展を見せる草の根大学のサウザン・ニューハンプシャー大学(Southern New Hampshire University)、最小限の投資と資源で最大の利益を確保する、同じく草の根大学のエンディコット大学(Endicott College)、古い歴史とプログラムの高い質を誇るミドルレベルの規模であるマサチューセッツ大学アマースト校のオンラインMBAの実態を紹介した。サウザン・ニューハンプシャー大学とマサチューセッツ大学アマースト校については、2019~2020年に追跡調査を行っている。 上述した実態調査に加え、現在のアメリカのオンラインMBAの状況に関して、GMACが公表している多様なサーベイ調査から、コロナ危機以前とコロナ危機の最中の統計調査を探り、可能な範囲でまとめている。オンラインMBAのアメリカでの進展及び世界での進展がデータから読み取れているが、今後はコロナ危機後に向けて、どのような方向に進むのかさらなる調査を課題としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「海外では成熟しているオンラインMBAが日本で普及していない現状を踏まえ、①海外(アメリカ、インド、マレーシア)のオンラインMBA教育のビジネススクールでの実態とそれを活用する企業実態、②日本企業でのオンラインMBA教育の浸透実態と導入課題の解明、③日本企業でのオンラインMBA教育の普及方法、という視点から調査及び分析を行い、日本企業の課題であるグローバル人材の効率的な育成方法の一つを提案する。」これが研究当初の目的であるが、コロナ危機により、海外での実態調査が行えないため、マサチューセッツ大学アマースト校、エンディコット大学、ニューハンプシャー大学のオンラインMBAに関する最新のインタビュー調査が遅れている。さらには、インドとマレーシアにも現在のコロナの状況では、調査に行くことは不可能なため、来年度に行えるかどうか思考中である。加えて、今後の発展が予測されるトルコでの調査も行いたいと考えている。これらの調査は、今後のコロナ危機の状況によって左右されると考えている。 「なお、日本企業の海外教育制度の中での海外MBA派遣制度の再開、経営の危機に直面する多くの日本の限界ビジネススクールへの導入、日本のビジネスパーソンや専門職の人々のセカンドディグリーとしての機能など、オンラインMBAという新たな教育ツールは、ユニークな解決方法をもたらすだろう。本研究は日本で初めてのオンラインMBA教育に関する研究であり、今後のMBAに関する中心的な研究テーマの一つになると確信している。」これも研究当初の課題であったが、この部分に関しては、コロナ危機が落ち着いたら、日本企業へのアンケート調査を予定している。現在の状況では、アンケート調査への企業の参加があまり見込めないため、調査をいつ行うのか、思案中である。 以上のような理由により、本研究は実態調査の面で、当初の研究計画よりも「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度および最終年度には、以下のような3点の調査を実施することを考えている。 第1は、オンラインMBA教育に関するアメリカのビジネススクールでの調査である。 第2は、アジアでのオンラインMBA教育のヒアリング調査である。インドとマレーシアまたはトルコを抽出した。アジアには、トルコ(アナドル大学)、パキスタン(アラマ・イクバル・オープン大学)、イラン(バヤメ・ムーア大学)にも大規模な通信制の大学が存在する。オンライン教育はアジアではすでに主流になっているため、この点についても可能な限り実態調査を行う予定である。しかし、アジアでのコロナの状態がいつ終わるのか、あまり先が見えていないのが現状である。 第3に、日本企業2000社へのアンケート調査については、平成29~令和1年度の科研費研究のなかで研究代表者(金雅美)が行った調査結果から、100社程度の海外教育制度のある企業からの返信が見込まれている(コロナ危機直前の調査である)。その準備や作業方法については、十分に熟知している。同様のアンケート調査を、実施する予定である。この調査に関しても、コロナ危機の状況次第である(回答企業数が少なくなるため) そのため、上述した調査のさいには、海外MBA派遣制度に関する報告書を作成し、その報告書を企業に配布して、アンケートおよびインタビュー調査に参加してもらうことを考えている。これによって回答企業数が増える可能性が大きいことが、筆者の過去の調査経験から判明している。そのため、現在はこの報告書の作成を行っている。逆に、このような報告書がないと、調査に参加してくれる企業数がかなり少なくなると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度には、以下のような3点を実施することを考えている。 第1に、アメリカでの実態調査である。第2は、アジアでのオンラインMBA教育のヒアリング調査である。インドとマレーシアまたはトルコを予定している。第3は、日本企業2000社へのアンケート調査である。第4に、第3の調査を行うために、海外MBA派遣制度に関する報告書を、現在作成中である。この報告書の作成に関して、ある程度の予算を使用する予定である。なぜならば、この報告書の内容と体裁は、企業向けのものであり、上述した調査に参加してくれる企業に配布する予定であるからである。 前年度の実態調査は、コロナ危機のため、全く実行するすることができなかった。しかし、日本企業数1社に対しては、インタビューをオンラインで数回行い、よい結果を得ることができた。この企業に対しても、作成前の報告書の一部を配布して、調査に参加してもらうことができた。そのため、この調査書の作成が、本研究の実態調査を行う上で、キイとなると考えているため、可能な限り企業にとって参考になるような報告書を作成中であり、そのための費用が必要である。 また、本研究は実態調査が中心の研究であるため、コロナ危機の終息に向けて、実態調査の実施計画は十分に練っている。しかし、コロナ危機がどのような方向に向かうのかにより、多少の調査の修正や、調査を実施する国の選択は異なってくると考えている。
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