研究課題/領域番号 |
20K01922
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研究機関 | 学習院女子大学 |
研究代表者 |
金城 亜紀 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (00636946)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 担保 / 渋沢栄一 / 倉庫 / 製糸業 / 製糸金融 / 動産担保 |
研究実績の概要 |
コロナ禍の影響で当初の研究計画は遺憾ながら実施することが昨年に引き続きできなかった。すなわち、予定していた長野県諏訪地方における一次史料のデータベース化は現地の研究協力者の高齢化が進み、感染症対策に充分な配慮が必要であったため行うことができなかった。研究代表者は方針を修正し、わが国における倉庫金融の嚆矢について研究を進めることとし、主として日本の近代銀行制度が成立した時期に焦点を当て原史料を中心に文献を丁寧に調査した。その成果の一つが2022年2月に刊行した査読付論文「渋沢栄一と近代倉庫金融の嚆矢-択善会議事録にみる明治初期の銀行と倉庫業」(「法と経営研究」第5号、31-54頁)である。本論稿においてこれまで等閑視されていた渋沢栄一と倉庫金融に関し、日本の銀行協会の源流となる択善会の議事録に基づき解明することを試みた。その結果、1877(明治10年)11月5日の同会会合において渋沢が倉庫に動産を保管し、それを担保とする金融を提唱し銀行が主体的にその業務を実施することを建議したことが明らかになった。明治政府に対する建議自体は西南戦争が勃発するなどの理由で日の目を見なかったものの、この時点においてかの渋沢が銀行による倉庫金融を銀行家の会合である択善会で正式に提唱したことが注目される。本研究の対象である上田倉庫における繭担保融資の一つの起点がここにある可能性が極めて高いことを明らかにした意義は少なくないと考えるところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍の影響で長野県諏訪地方における現地調査ができなかったため。他方、製糸金融における倉庫の役割については、上記で述べたようにより広い視野に立ち進捗している。今後は新型コロナ感染症の推移に留意しつつ、現地入りを試みたい。
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ2年間現地調査をすることができなかった本研究を本年度は可能な限り行うことと致したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、2年連続で新型コロナ感染症により長野県諏訪地方において上田倉庫の原史料を実地見聞することができなかったためである。本年度は感染症が収束することに期待しそれが実現すれば、実施計画に基づき現地入りすることを目指し当該助成金を使用する計画である。
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