研究課題/領域番号 |
20K01931
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
平井 孝志 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (60800597)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 戦略計画 / ダイナミック・ケイパビリティ / テキスト計量分析 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本企業の中期経営計画のコンテンツに焦点を当て、その内容がどのような特徴を持つのかについての分析を行ない、その内容の違いが経営成果にどう反映されるかを探索している。これらを明らかにすることによって、日本企業が、近年着目を浴びるダイナミック・ケイパビリティを発揮するための一助としたいからである。 まずは、中計コンテンツ分析の初期的試行として、一企業における過去一連の中期経営計画を取り上げ、それらの内容の変遷を、テキスト計量分析の手法を用いて実証的に分析を行なった。対象企業としては、大和ハウス工業を選定した。大和ハウス工業は、長期にわたり売上高・営業利益率を着実に拡大させてきた企業である。過去20年の間に売上高を1兆円から4兆円へと拡大し、営業利益率もおおよそ4%から10%弱まで向上させている。 分析においては、頻出語、共起ネットワーク、対応分析等を用い、過去から現在に至るまでの中期経営計画の特徴を分析し、関連性や焦点の変遷などを中心に分析した。分析結果から、2005年度を起点とする第一次中期経営計画から、第五次経営計画に至る流れの中で、ダイナミック・ケイパビリティの3つの能力・プロセスである「感知」「捕捉」「再配置」の要素を確認することができた。また、建設業は一般的に言って研究開発比率がさほど高くない業界であるが、頻出語の上位に「技術」が現れるなど、ダイナミック・ケイパビリティの向上に資する活動に注力している様が読み取れた。これらの成果は、2020年3月の実践経営学会の全国大会にて発表され、その後、発表論文集に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終的には、日経225の製造業を対象に中期経営計画のコンテンツ分析を拡大し、日本企業のダイナミック・ケイパビリティの発揮の一助とし、また動態的戦略論の構築に貢献したいと考えているが、中期経営計画をテキスト計量分析にかけるためのデータ整備に想定以上の時間・労力がかかっている。しかしながら、研究補助員を活用してデータのクリーニングを行うと同時に、先行研究のレビュー等も並行して行っているので、おおむね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
日経225の包括的分析に着手する前に、もう一つの試行的実証研究をまずは実施する予定である。中期経営計画の内容をテキスト計量分析を行なう際の視座の整理をおこなうことも含め、次なるステップとして、一業界を取り上げた企業間比較を実施する予定である。 現在分析を進めている業界は、日本経済にとって重要であり、かつ、業績に大きなばらつきがみられる家電業界である。より、具体的には、日立製作所、パナソニック、ソニー、三菱電機、富士通、日本電気(中計が過去分に渡ってHPで取得できた企業群)を対象とし、それらの中期経営計画の内容比較を実施する予定である。 この業界内の分析に関しては、完了後、学会発表を行い、そこでの議論内容を踏まえ、動態的戦略計画論の概念整理を進め、日経225製造業全体での実証分析、ならびにダイナミック・ケイパビリティと戦略計画論の接合を試み、学術的にも実務的にも意味のある示唆を導出していきたい。
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