研究課題
現代の企業には「自然と折り合いをつける経営」が求められている.大量採取・大量生産・大量消費・大量廃棄という一方向的な経済活動を自然に負荷をかけずに企業の存続が可能となるような「環境経営」(Sustainable management)へのシフトが急務である.本研究は,これまでの研究成果をもとに,欧州への環境経営の移転の問題に焦点をあてた.そこではグローバル化が進む日本の製造業において,国内で開発・蓄積・発展させた環境経営を,いかに海外子会社へスムーズに展開できるかが重要課題といえる.本研究は主に「文化的要因(組織文化,組織アイデンティティ等)」に焦点をあて,欧州子会社への実証調査を通じ環境経営の移転メカニズムを解明しようとする点に独自性,創造性を見出すものである.本研究は,当初から予期せざるハードルに直面しつつ取り組むこととなった.一つはCOVID-19蔓延の常態化であり,海外渡航が制限されたうえ効率的調査・研究活動がたいへん困難となった.もう一つはロシアによるウクライナ侵攻に伴って本研究の質問紙票調査対象である欧州に政情不安が生じたことであり,複数国への航空郵便物の取扱・送付が停止されたほか回収率にもマイナス影響を及ぼしたものとみられる.これらのハードルをクリアできたのも,①本研究の2年度目(令和3年度)に統計調査・解析および組織の文化的要因に関するエキスパート2名が分担者として参加・協働くださったこと,②1年の期間延長が認められたこと,によるところが大きい.結果として欧州33カ国,三千百社余りへのQRコード入り質問紙票の郵送(別途,数百社への再郵送等)および回収を研究期間内になんとか完了し統計分析に耐えられる三桁のサンプルを収集するに至った.あくまで基礎的分析に過ぎないが,移転には文化的要因(環境保護文化)および制度的要因(環境サポート)が影響する傾向が認められた.
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Journal of Applied Management
巻: Vol. 61 ページ: 91, 98
The Journal of Organization and Discourse (JSCOS)
巻: Vol. 3, No. 1 ページ: 26, 31
10.36605/jscos.3.0_26