研究実績の概要 |
2020年度から2023年度の4年間の研究期間の中で、計画通りの実績を残すことができた。まずは、2020年度から2021年度までに、SEDAモデル(Science, Engineering, Design, Art)の概念的なフレームワークを完成させた。次に、消費財については、2021年に「アート思考のものづくり」(日本経済新聞出版)を出版した。そこでは、ユーザーに迎合するのではなく、作り手がデザイン哲学を表現する重要性を明らかにした。 2022年度は、SEDAモデルを生産財企業へ応用するための実証研究を積み重ねた。その成果として、2023年3月に「キーエンス 高付加価値経営の論理」(日本経済新聞出版)を出版した。本書で明らかにした点として、キーエンスは、付加価値を最大化することを、企業哲学として目標に掲げてきた。付加価値を最大化するためには、生産財なので、顧客企業の利益を最大化するためのソリューション提案を行なっていた。つまり、SEDAモデルの中では、機能的価値(ScienceとEngineering)ではなく、意味的価値(DesignとArt)が重要な点を実証した。顧客が企業であれば、生産財企業から提供される商品(ソリューション)によって実現される利益向上効果に対して、対価を支払う。費用対効果の大きさが最も重要である。 2023年度は、集大成となる論文として「SEDAモデルによるイノベーション:デザイン・アートを超えた統合的価値」を執筆して「組織科学」に受理され、2024年度に掲載される予定である。本論文では、上記の2冊の著書の内容も含めて、SEDAモデルの活用について議論した。 4年間の研究期間に、SEDAモデルの理論と応用に関して深掘りした研究を、2冊の著書にまとめて出版した点も含めて、計画通りにSEDAモデルの理論化と実証において、実績を上げることができた。
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