研究課題/領域番号 |
20K01948
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
小林 稔 和光大学, 経済経営学部, 教授 (50287926)
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研究分担者 |
西岡 久充 龍谷大学, 経営学部, 准教授 (10513757)
小林 猛久 和光大学, 経済経営学部, 教授 (40434211)
杉本 昌昭 和光大学, 経済経営学部, 教授 (90318725)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | AI / 人工知能 / ディープラーニング / ビッグデータ / 生成系AI / 雇用 / 賃金 / データサイエンス |
研究実績の概要 |
2023年度は、AI(人工知能)の組織における利活用の実態を解明すべく調査・研究を推進した。この1年は、生成系AIの進化が著しく、組織におけるAIの利活用の対象領域が大幅に広がった。相模原市など地方自治体の行政業務に生成系AIを導入する事例をはじめとして、各分野でAIの利活用が一層広がった。その背景として、組織に応じて独自の内容をAIに学習させることによって、各組織に最適化された生成系AIを構築し業務に導入することが可能なプラットフォームが提供されるようになったことが挙げられる。また、プログラム作成を生成系AIを用いて効率化する試みも広がっている。このように、生成系AIの進化は、経営組織におけるAIの利活用を促進し、次なるステージへと進みつつある。その一方で、定型的な業務はAIによって代替する動きが、多様な分野で進んでいくことが予想される。AIが雇用へ与える影響については、さらに詳細な調査・研究を進めていく予定である。2023年度は、AIを用いて、社会経済に関わる諸問題を分析し以下の論文を公表した。特に、日本の雇用と賃金の問題、科学技術開発の問題、金融市場における問題について検証を行った。 公開論文:「低迷を続ける日本の賃金上昇率に関する構造的な課題の検証 -ベイズモデルとAIシミュレーションを用いた実証分析-」(和光経済第56巻1号)、 「科学技術開発の効率性に関する国際比較 : DEA とSFA による実証分析」(和光経済第56巻2号)、 「COVID-19のパンデミックが小売販売額へ与えた影響に関する実証分析 ―ベイジアンモデルを用いた業態別小売販売額の変動の検証―」(説得交渉学研究 第14巻1号)、 「COVID-19 収束後の日米株価指数の変動の検証 -ベイジアンモデルとAIシミュレーションを用いた株価指数の実証分析-」(和光経済第56巻3号)。以上。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、AI(人工知能)の組織における利活用の実態を解明すべく調査・研究を推進した。特に、ChatGPTに代表される生成系AIについてそのポテンシャルや応用分野などについて調査分析を行い、今後の企業経営への導入や既存の業務の効率化、代替の可能性について検討を試みた。他方、AIを用いた分析モデルを構築して雇用、賃金、科学技術開発、金融市場の動向を分析し検証する研究を進めた。このように本研究では、産業企業におけるAIの利活用の動向を調査研究する一方で、実際にAIを用いた分析モデルを構築して社会経済における諸課題の分析および検証を進めている。 しかし、産業や企業におけるAIの利活用をより詳細に調査・分析するために計画していた組織に対するアンケート調査およびヒアリング調査については、2023年度は実施を見合わせた。その理由は、COVID-19が収束したものの、2023年度の前半においては、産業や企業の諸活動が、まだCOVID-19のパンデミック以前の水準に戻っていなかったことである。企業の本来業務の負担増となるアンケート調査やヒアリング調査を2023年度に実施しても回収率などは低水準となることが予想され、満足な回答を得ることが困難であると判断した。アンケート調査やヒアリング調査については、2024年度に社会経済活動の回復の状況を確認した上で実施することとした。また、アンケート調査やヒアリング調査の結果を整理して、組織におけるAIの利活用の実態を検証することも2024年度に実施する。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、AI(人工知能)の組織における利活用の実態を解明すべく、組織に対するAIの利活用に関するアンケート調査やヒアリング調査を実施する。また、アンケート調査やヒアリング調査の結果を分析して今後のAIの企業経営への導入や既存の業務の効率化、代替の可能性について考察する。さらに、生成系AIについてそのポテンシャルや応用分野などについて調査分析を行なっていく。特に、相模原市などの生成系AIを組織に導入した事例を調査して、具体的な業務への適用可能性を検証するとともに雇用への影響について考察する。さらに、生成系AIの適用範囲や業務の代替可能性についても検証を進めていく。 一方で、実際にAIを用いた分析モデルを構築するとともに、多様なビッグデータを収集して、社会経済における諸課題の分析および検証を進めていく。 雇用、賃金、科学技術開発、外国為替取引、株式市場などを分析の対象として、AIを用いたシミュレーションモデルを独自に構築して分析する。 2024年度は、本研究課題の最終年度であり、組織におけるAIの利活用の実態および雇用への影響について、これまでの研究成果をまとめて積極的に研究成果を公開していく。 一方で、AIを用いた分析モデルの構築法やAIを用いた社会経済の分析手法についてこれまでの成果をまとめていくとともに、実際にAIを用いて分析した社会経済の諸課題の検証結果を公開する。 以上の結果から、AIが今後の社会の中で利活用される青写真を示すとともに、AIを社会経済の分析に用いるための具体的な手法を提示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は、AI(人工知能)の組織における利活用の実態を解明すべく調査・研究を推進した。他方、AIを用いた分析モデルを構築して雇用、賃金、科学技術開発、金融市場の動向を分析し検証する研究を進めた。 しかし、産業や企業におけるAIの利活用をより詳細に調査・分析するために計画していた組織に対するアンケート調査およびヒアリング調査については、2023年度は実施を見合わせた。その理由は、COVID-19が収束したものの、2023年度の前半においては、産業や企業の諸活動が、まだCOVID-19のパンデミック以前の水準に戻っていなかったことである。企業の本来業務の負担増となるアンケート調査やヒアリング調査を2023年度に実施しても回収率などは低水準となることが予想され、満足な回答を得ることが困難であると判断した。2023年度に、アンケート調査およびヒアリング調査を実施しなかったため、アンケート調査およびヒアリング調査のための費用が残額となり、次年度使用額が発生することになった。アンケート調査やヒアリング調査については、研究期間を1年延長して2024年度に社会経済活動の回復の状況を確認した上で実施することとした。このため、次年度使用額は、2024年度にアンケート調査およびヒアリング調査の実施のために使用する計画である。
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