研究課題/領域番号 |
20K01967
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
石川 和男 専修大学, 商学部, 教授 (60300034)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 事業継承 / 後継者不在 / 中小零細事業者 / 老舗 / 家族 / 小売業 / サービス業 |
研究実績の概要 |
本研究は、本来であれば事業を承継し、その継続が可能な小規模零細事業者が、後継者不在を理由として廃業し、地域社会において経済的損失が発生している現状を直視し、その状況改善を学術的に考察することを目的としている。 そこで中小零細規模の企業における事業承継前の承継啓発・承継後の継続可能性に焦点を当て、さまざまな方策の有効性とそのために必要な支援、伝達すべきノウハウを明確にすることも目的としている。 2020年度は、上記の研究目的を実現するため、とくに中小零細規模の企業において行われてきた「ノウハウの伝達」に焦点を当てた。まず社会学などで行われてきた老舗研究における特定家族の行動を扱う研究成果について文献調査を重ねることで整理をした。ただ本研究は、商学からのアプローチを中心とするため、取引・利益継続の視点からさまざまな事例について焦点を当てた。そこでは小規模零細事業者も継続的に取引をし、利益を得ることが大前提であるため、それらに関した文献や資料を収集し、コロナ禍ではあったが、実際にインタビュー調査を行うなどして、研究成果をまとめていった。 とくに過疎化の進む地域においても小売・サービス業は必須であり、限界集落や買い物難民等の問題にも影響を及ぼすため、それらの地域において、長期間継続してきた商業活動やそれを担った家族に対する調査を行ってきた。それらの成果については、すでに研究会や学会報告なども行っている。また研究報告した内容などについては、複数の論文にまとめ、すでに公刊されたものもある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は概ね順調に進んでいると判断している。その理由は、当初の研究計画に沿って、文献調査などは必要な資料等を収集し、それらを整理・考察できているためである。ただ、文献調査だけでは、判然としない家族間におけるノウハウの伝達などについては、実際に聞き取り調査をするなどして、裏付ける必要がある。そうした活動がコロナ禍のため、対面での調査が十分に実施できず、停滞している面がある。 こうしたコロナ禍による対面調査(インタビュー調査)を十分に実施できない面はあるが、初年度はこれまでの研究整理を中心としたことから概ね順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
文献調査は、国内外の新聞や雑誌、専門調査機関におけるデータの整理を継続的に収集する。その上で、小売・サービスの小規模零細事業者300社に対し、質問票調査を実施したいと考えている。こでは、事業承継環境や支援、さらに当該事業所において伝達すべき固有のノウハウの有無を中心に調査する。そして、前年度の研究・調査機関が発表したデータとの整合性を確認し、質問票調査で得られた特徴的な事業者への聞き取り調査を実施する。ただ、コロナ禍にあり、とくにその影響を受けた小売業やサービス業が多いことから結果にかなりのバイアスがかかることが危惧される。 そのため2年目も文献調査は、1年目と同様に新たなデータの収集整理を行う。また前年に質問票調査で得られたデータについて、学会報告や支援機関において報告し、意見聴取を行いたいと考えているう。その上で国内の小規模零細事業者や支援機関への聞き取り調査を時機を見ながら実施したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症のため、地域に出向いてのインタビュー調査が十分に実施できなかったため、旅費について予定通りの支出ができなかった。 またアンケート調査を実施しようと計画していたが、やはり新型コロナウイルス感染症のため、結果にバイアスがかかることが見込まれたため、実施できなかったため。
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