研究実績の概要 |
本研究の目的は、クラウドソーシングにおける、顧客への選択エンパワーメント(顧客にアイデア選択を委譲)と市場成果との関係について、ランダム化比較フィールド実験等の実証研究を通して、明らかにすることである。 研究初年度は、コロナ禍のため、当初の計画を修正せざるを得ない部分もあったが、研究全体の基盤となる、2つのことを実施することができた。第1に、クラウドソーシングにおける市場成果と、その要因に関する理論研究をおこなった。そのために、まずはクラウドソーシングに関する先行するレビュー論文を再度探索し、それらの内容を確認した。その結果、本研究課題に関するレビューが欠如していることが改めて確認できた。次に、多くの文献が網羅されているオンラインデータベースのSCOPUSから関連研究を抽出し、それらの論文を収集し、システマティックレビューを実施した。クラウドソーシング研究は、ユーザー・イノベーション(von Hippel, 2005)をはじめ、オープン・イノベーション(Chesbrough, 2003)、共創(Prahalad & Ramaswamy, 2004)、価値共創(Vargo & Lusch, 2004)などの研究が源泉として存在し、多くの領域に研究がまたがっているため、網羅的にレビューを実施できるシステマティックレビューという方法を採用した。その成果の一部は、レビュー論文として『組織科学』(西川, 2020)にて公刊した。 第2に、研究の計画について、関連研究者や実務家と議論するため、オンライン研究会を複数回開催した。研究代表者がリーダーを務める日本マーケティング学会の「ユーザー・イノベーション研究会」をはじめ、産学共同で新たに立ち上げた6社が参加する「User Innovation Lab.」にて、成果の報告や議論だけでなく、研究協力に向けての関係性の構築もはかれた。
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