情報技術の発展に加え、社会構造の変化によってシェアリングへの関心が学術および実務の世界において高まっている。特に注目されるのが移動と宿泊サービスにおけるシェアリングである。さらに近年では、シェアリングで利用される有形財や無形財の範囲が広がっている。これらは、稼働状況が低いもしくは利用頻度が低いものを資源として転換している状態にある。シェアリングそのものは以前よりあったが、これが情報技術の発展によってプラットフォームを利用することでシェアリングの可能性を高めている。本研究はこのようなシェアリングが既存の企業間取引だけでなく、消費者間の取引を加速させることによってマーケティング研究に影響を与えることを考慮し、特にサービス・ドミナント・ロジック(以下、S-Dロジック)の視点からアプローチしたものである。S-Dロジックの既存研究ではシェアリングについてはほとんど触れていないが、その分析に必要となる枠組みや概念は提示されている。そこで、本研究では消費者(もしくはアクター)による資源統合と利用という視点から検討を加えている。シェアリングという資源の共有においては、利用できる資源への認識が必要となる。特に循環型社会においてはリサイクルやリユースといった資源の利用が求められており、これらとの接点の中でシェアリングが発展してきているといえよう。さらにシェアリングでは、それを実行する制度(法制度やルール)との関係も検討が求められる。近年、議論されている地方都市における移動手段のシェアリング、制度および制度配列の再構築が求められる状況にある。そのような視点からS-Dロジックにおけるエコシステムの構築がシェアリングによる資源の利用に大きな効果があると推察される。
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