研究課題/領域番号 |
20K01975
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
森本 真理子 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (20647359)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自己開示 / 個人情報 / ソーシャルメディア / プライバシー懸念 |
研究実績の概要 |
本研究では、消費者による企業への個人情報開示の傾向と先行要因をプライバシー・パラドックスの視点から調査する。コミュニケーション境界マネージメント(CBM)理論に基づき、ソーシャルメディアマーケティングの視点から、消費者の個人情報開示傾向と企業への信頼度、個人の性格傾向や文化的要因等との相互作用、及び個人情報開示方法の傾向などを探究する。CBM理論によると、個人情報開示の決定の際、開示する対象との関係や相互信頼度が大きく影響するといわれる。先行研究では、消費者の情報開示拒否がいつなされるか、と否定的な観点から研究されてきた。しかし消費者との信頼構築において、CBM理論に基づく新しいアプローチは、マーケティングへの適用性も高い。 本研究は3段階に分けて実施され、令和2年度はCBM理論の適用性の追求のため、消費者の個人情報開示傾向や、企業による個人情報収集と利用、及びプライバシーパラドックスに関する定性調査を実施した。20代から50代までの一般消費者からインタビューを通してデータを収集し、分析結果を基に定量調査用の質問票に利用する尺度の選択を行った。 データ分析結果によると、ソーシャルメディアを情報収集等に常時利用している消費者は、企業による個人情報収集やその利用に対し強い懸念を持たず、個人情報に基づく企業からの情報提供は購買決定に有益であると考える傾向にあった。また、消費者が企業に提供を許可する個人情報は、主に氏名、年代、メールアドレス、固定電話番号、閲覧情報等で、スマートフォン利用から得られる位置情報等の提供には懸念を感じていた。個人特定や損害に関するプライバシーは守られるべきだが、プライバシーの全てを保護したい場合はソーシャルメディア等の利用は不可能との見解も見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
定性調査のデータ収集・分析作業により定量調査用の尺度選択及び質問票が完成し、令和3年度の活動中心となる定量データ収集の準備が順調に進行している。定量調査のための学内倫理審査委員会の審査書類も完成し、実施承認が下り次第データ収集に取り掛かる予定である。 また、文献調査や分析済みの定量データをもとに、令和3年初旬に海外大学院でのセミナー向けに、専門家インタビューをオンラインで受けた(メルボルン大学)。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、学内研究倫理委員会の承認が下り次第、消費者の個人情報開示の要因とプライバシー懸念関連の定量アンケート調査を行う。American Academy of Advertising Annual Conference、Association for Education in Journalism and Mass Communication等の学会発表や、Journal of Marketing Communication、Journal of Interactive Advertising、CyberPsychology, Behavior, and Social Networking等の国際ジャーナルに論文投稿を予定。 令和4年度は、消費者が能動的に開示する個人情報の種類、及び企業との関係や距離感の個人情報開示傾向への影響を探究するために、多要因計画に基づく実験を行う。個人情報の種類(定性調査、アンケート調査結果より選択)及び企業(ブランド)との距離感(①未知のブランド; ② 名前を認識されるブランド; ③ 過去に購入経験のあるブランド)を操作した架空の情報収集用プラットフォームの画像を制作。個人情報の種類やブランドとの距離感の単独要因と交差作用が、情報開示傾向や、開示する情報の種類及びブランド評価に与える影響を調査する。データ収集後、前述の学会及びJournal of Advertising、Computers in Human Behavior、Journal of Interactive Marketing等に論文投稿を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染状況の影響により、出張やリサーチ・アシスタントの採用を見合わせたこと、また英語論文校正費用を計上しなかったため。残額は令和3年度に、主に定量データ収集のために使用予定である。
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