本研究では、消費者の企業へのパーソナルデータ(個人情報)の開示傾向とその先行要因の調査を、プライバシー・パラドックスやコミュニケーション・プライバシー・マネージメント理論をベースに遂行した。令和2~3年度に行ったインタビューやオンラインアンケートでは、ソーシャルメディアで購買関連情報収集を行う消費者は、企業によるパーソナルデータ収集・利用に対しそれほど強い懸念を持たず、企業からの情報は購買決定に有益であると考える傾向が顕著であったことが確認された。また、追加のオンラインアンケートでは、個人の文化的要因が消費者のパーソナルデータ提供に対する考えに調整効果をもたらすことが判明し、この分析結果は、国際学会(International Communication Association)で令和5年5月に発表予定である。 更に、実験操作法に基づき日本在住の消費者800名を対象にデータ収集を行い、企業が収集するパーソナルデータの種類とブランドに対する認知度が、対ブランドの信頼感、プライバシーに関する懸念、及び企業へのパーソナルデータ開示に及ぼす影響を調査した。分析結果によると、企業(ブランド)から要求されるパーソナルデータや、消費者のブランドの認知度は、消費者のパーソナルデータ開示に対する考えに影響を与えないことが明らかになったが、文化的要因である不確実性回避と独立性自己感は、ブランドに対する信頼とパーソナルデータ情報の開示との間で、調整変数として作用することが確認された。この結果は論文として査読付き国際ジャーナル(Journal of Promotion Management)に投稿され、審査中である。
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