研究課題/領域番号 |
20K01995
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
酒井 麻衣子 中央大学, 商学部, 准教授 (20409816)
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研究分担者 |
森藤 ちひろ 流通科学大学, 人間社会学部, 教授 (10529580)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | サービス・マネジメント / 顧客満足の因果モデル / 健康行動理論 / 行動変容技法 / 介入 / 自己効力感 / ソーシャル・サポート |
研究実績の概要 |
健康関連サービスの中でもフィットネスクラブに焦点を当てているが、初年度に引き続き2021年度もコロナ禍による消費者の利用行動への影響が多大であった。よって予定されていた仮説検証のための定量調査や実証研究は先送りし、文献調査による仮説の精緻化に取り組んだ。特に、健康関連サービスの継続利用を促進するためのサービス・マネジメントにおいて、健康行動研究の知見をどのように応用できるのかを検討した。 既存研究のレビューにより、(1)健康行動における行動変容を扱う「健康行動理論」、(2)代表的な健康行動(身体活動、食事・栄養、睡眠)およびeHealth/mHealth、(3)フィットネス産業に関わる研究動向、を概観することで、以下のように知見が整理された。
健康行動を生じさせ、維持するために必要な要素や、そのメカニズムを説明する行動理論は多数存在し、実証研究による知見も多い。理論横断的な総合的理解、システマティックレビューやメタアナリシスによる知見の統合、介入戦略開発法の洗練も進んでおり、サービス研究への応用可能性が大いにある。/健康行動理論とサービス設計とを明確に関連づけた研究は見受けられない。/健康行動を変容させる「介入」を、定常的なサービスの仕組みとして取り入れることの有望性が確認できた。具体的な介入内容も「行動変容技法」として整理されており、サービス設計時の参考となる。/一方で、健康行動研究で求められる介入の緻密さにはデメリットもある。利用者の選別もできず、必ずしも個別対応できない商業サービスでは厳密な応用は難しい。よって、介入効果をある程度維持しつつ、介入戦略を簡略化するための具体的方法(顧客のセグメント化、費用対効果の考慮など)を見極めることが重要となる。
これらの検討結果は、次年度に取り組む本格的な実証研究に向けて重要な示唆となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
長引くコロナ禍により、2021年度もフィットネスクラブの利用控えや休会・退会など、利用行動への影響が大きかったため、継続利用に関わる消費者心理を明らかにするための調査を行うには時期が不適切であると判断し、文献調査を重点的に行った。それによって得られた知見と、初年度に行った探索的な定量調査の結果も合わせ、仮説を精緻化することができた。当初計画よりほぼ1年遅れとなるが、次年度に仮説検証を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初2年目に計画していた消費行動モデルの実証分析については、フィットネスクラブ利用者に対する追跡定量調査と、医療法人の運営するメディカル・フィットネス施設の利用者に対する定性調査を予定していた。このうち後者については、施設自体も通常運営に戻りきっていない可能性が高いため実施を取りやめるが、追跡定量調査の回答者の一部に対してインタビュー調査を行うことで代替する予定である。 なお時間的猶予があれば、上記の検証結果をもとに、フィットネス利用者に限らない一般消費者への調査で更なる検証を行うか、もしくは特定のフィットネスクラブの協力が得られれば、実証実験による検証を試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、予定していた調査の実施を延期したり、実施方法を修正したりしたため。次年度に延期・修正した調査を実施する。
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