研究課題/領域番号 |
20K02000
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
福田 康典 明治大学, 商学部, 専任教授 (90386417)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 消費者情報 / マーケティング・リサーチ / 情報倫理 |
研究実績の概要 |
令和三年度は、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、対面でのヒアリング調査及びインタビュー調査の実施が難しかったため、引き続き文献サーベイを中心に研究を進めてきた。具体的な内容としては、昨年度考察してきた領域に、新たに地域デザイン研究やコミュニティ研究、人工物科学研究などの領域を加えて文献サーベイを行い、使用文脈情報が主体間ネットワークにおいて生み出す影響力の概念化を試みた。また、情報やそれを生み出すツールをある種の人工物と捉え、そうした人工物をデザインするという観点から、使用文脈情報の多層的なフローに関する分析枠組みについて探索的な考察を行った。 こうした研究を通じて、いくつかの進展を得ることができた。一つは、生み出された情報がその情報の意味を生み出す基盤そのものの形成に強く関わってくるというパフォーマティビティあるいは再帰性といった概念の重要性を確認することができた点である。情報の内容やフローを管理するという課題設定の場合、フロー基盤そのもの(例えば、情報の意味を付与する体系や情報の流れの背景にある関係性ネットワークなど)は所与の前提として議論の対象からは外されることが多い。しかし、こうした基盤が情報実践とのかかわりの中で創発的な性質を示すという点を研究枠組みの中に組み込むことは、新たな研究知見の獲得に非常に有益であると思われる。また、もう一つの進展は、使用文脈情報のフローが埋め込まれているかコンテクストを説明変数として組み込む必要性を確認することができた点である。こうした情報交換の付随的性質を考慮することで、個々の情報フローの位置づけをより明確に理解できるようになると考えられる。 こうした研究活動の成果は、昨年度実施した研究での知見とともに、4回の学会発表(うち1回は国際学会)と2本の論文を通じて公表されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度は、新型コロナウィルス感染拡大の影響を強く受けたため、対面で実施する非構造的なインタビュー調査や企業等へ訪問して行うヒアリング調査を延期せざるを得なかった。そのため、当初の予定を変更して、文献サーベイを中心とした研究活動となった。文献サーベイの範囲を当初の予定よりも広げることができたことは、新たな重要概念の把握という点で補助事業全体としてはプラスに働いているが、研究の進捗状況という点で言うと、実証データの収集部分にやや遅れが生じていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染拡大の影響は予測が難しいが、令和3年度末あたりからやや収束の兆しが見られるようになってきている。いまだ不確実性は残るものの、こうした傾向を踏まえ、令和4年度研究ではインタビュー調査やヒヤリング調査の実施を優先し、実証データ収集の部分の遅れを取り戻したいと考えている。 そのため、調査の実施を積極的に進めるというだけでなく、より効率的な実施を試みる。具体的に言うと、当初は非構造的な調査を通じて仮説を抽出し、その仮説を構造的な調査で検証し、検証後の結果吟味のためにフォローアップ調査を実施するという流れを計画していたが、例えば、仮説抽出のための非構造的調査の規模を削減したり、あるいは仮説検証用の調査とフォローアップ調査を同時に実施するなど、調査デザインの再考を通じて、より効率的に実施ができるような工夫を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、実証データの収集の部分において実施を先延ばししている作業があり、その分の経費が次年度繰り越しとなっている。感染状況の好転の兆しが見られるので、延期していた調査を令和4年度補助事業において実施していく予定である。
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