研究課題
最終年度は、以下の2つの研究テーマに関して、これまでの研究結果を踏まえる形で定量的な調査を実施し、その統計解析の結果に基づく研究成果の報告を行った。一つ目の研究テーマは、消費者がプライバシーリスクをどのように知覚しているのかに関する考察であった。既存研究の多くが直接質問法を採用することでプライバシーリスクに対するアクセシビリティを強制的に高めている点を問題視し、こうした知覚上の歪みを無くしてより自然な形でのリスク知覚を測定するために、この調査では2種類の想起データを利用した。純粋想起と助成想起の比較を通じて、プライバシーリスクのアクセシビリティと知覚重要性を別々に考察したところ、プライバシーリスクは実際の消費者行動の文脈ではアクセシビリティが低いこと、いったんアクセシビリティが高まった場合は高い重要性が知覚されること、そしてプライバシー懸念などの消費者内要因ではアクセシビリティは高まりにくいことなどが明らかとなった。もう一つの研究テーマは、プライバシー保護を目的としたサービスの利用が消費者のプライバシーリスク知覚にもたらす影響を考察することであった。これまでは、プライバシー保護サービスの利用がプライバシーリスクの知覚を引き下げるとされてきた。しかし、本研究ではサーベイ調査の結果に基づきながら、プライバシー保護サービスの利用がプライバシーリスク知覚を引き上げる効果があることを明らかにしている。研究期間全体を通じて、ますますパーソナライゼーションされ高度化するサービスが不可欠となってきている現代社会において、多層的な情報フローの中に組み込まれざるを得ない状況となってきていること、そうした多層的フローは人工物の意義と可能性を常に書き換えながらより高い質のサービスを提供していること、しかしそのリスクは見えにくく、保護もしにくい性質を持っていることなどを明らかにすることができた。
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Arias Oliva, M. et al. (Eds.), The Leading Role of Smart Ethics in the Digital World
巻: - ページ: 41-52
巻: - ページ: 19-29
地域デザイン
巻: 22 ページ: 129-147