研究課題/領域番号 |
20K02002
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
須永 努 関西学院大学, 商学部, 教授 (20438914)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 感覚マーケティング / 消費者行動 / 実験心理学 / 音楽 / クロスモーダル対応 / semantec congruence / 音色 |
研究実績の概要 |
さまざまな楽器の音色に対する知覚を対象に、音色と視覚的刺激のsemantic congruence (SC)が消費者評価に及ぼす正の影響について研究を進めた。これまで、計6回の実験を実施し、音色と視覚刺激のSCは不一致や音楽なしと比べ、製品に対する消費者の評価を高めることを明らかにした。Study 1では日本だけでなく、イギリスとアフリカ(英語圏)の3エリアを対象に、10個の楽器に対する知覚の測定を行った。その結果、エリアによって、音色の知覚に違いがあることを確認している。 Study 2では、イギリス国籍を持つ人々を対象に実験を行った。本実験を前にpretestを実施し、9種類の素材の画像に対する知覚を測定した。その結果とStudy 1におけるイギリスでの回答を基に、SCの高い視覚刺激と音色のペアを抽出した。人々が実際に、抽出されたペアを一致していると感じるかどうかは、別途コントロール・テストを行って確認している。本実験では、書籍を紹介するプロモーション・ビデオを制作し、ビデオのBGMにおける音色と書籍のカバーデザインのSCが高いと、ビデオに対する好意度、書籍への興味、書籍への欲求、書籍への支払意思額が高まることを明らかにした。さらに、SCが消費者の製品評価を高めるメカニズムとして、feeling right(しっくり感)とポジティブ感情が媒介していることも示した。 Study 3では、日本人を対象に、同様の一致効果が見られることを確認した。まず、pretestを行って、Study 1から得られた日本人の音色知覚と合う視覚的刺激の選定を行った。Study 3は、実験室での実験を行った。実験の結果、BGMの音色とSCの高いボールペンの方が、協力者のfeeling rightが高まりやすく、その結果として、製品に対する評価が高まりやすく、選択もされやすくなることも確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2020年度は、音楽心理学および空間心理学の既存研究をレビューし、広告やインストア・マーケティングに適用可能な成果の整理を中心課題として研究を進めることを計画していた。また、他の感覚との相互作用については、クロスモーダル対応に関する研究を中心に、漏れのない形で文献レビューを行い、論理的精緻化と理論の体系化のために解決すべき問題点および研究仮説を導出することも計画していた。研究の主関心が異なる領域間における理論の適用可能性および関連付けであるため、実験心理学、認知心理学、消費者行動、マーケティング関連の学会へ幅広く参加し、取り上げる理論の内容、問題点等について最新の情報を収集し、他分野の研究者と積極的な意見交換を行うことも予定していた。これらすべてのことを実施することができた。 加えて、研究の2年目である2021年度に予定していた、初年度の文献研究から導出された研究仮説を検証するための実験(実験室で行う実験と、幅広い層のデータ収集が可能なオンライン調査の双方)も、一部実施した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、初年度の文献研究から導出された研究仮説を検証するための実験を引き続き進めていく。実験では、商品の評価・選択、売場や店舗への評価、意思決定(買い物)のしやすさ、および意思決定にかかった時間の収集と分析を行う。感覚刺激に対する消費者反応の多くが、無意識的に生じることを考慮し、潜在連合テスト(Implicit Association Test:IAT)による反応時間の測定、アイトラッキング法を用いた調査、分析を行い、選択時における視線の動きも追跡する。 研究が当初の計画以上に進展していることから、実験室やオンラインでの実験で確かめられた要因の効果が実際の店舗内環境でも支持されるかという外的妥当性を確認することを目的とした実店舗でのフィールド実験を2022年度にも一部実施する。フィールド実験は、その内的妥当性を高いものにするため店舗間比較を中心とした実験デザインを用いる予定である。ここでは、店舗内の環境要素をコントロールした上で、売上、販売数量等の量的データを収集する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大のため、海外での国際学会参加にかかる旅費が不要になったため。繰り越した分の金額は2021年度に前倒して実施予定のフィールド実験のための費用として活用する。この他、2021年度に予定していた実験室実験(協力者1人当たり5千円を想定)、大規模サンプルを用いたオンライン調査(協力者1人当たり千円の単価を想定)も実施する。フィールド実験では、サンプリングや実験実施に係わる費用として、協力者1人当たり5千円(交通費含む)を想定している。また、国際的なジャーナルや学会への投稿に際し、英文の校正が必須となるため、その費用として計200千円を見込んでいる。
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