研究課題/領域番号 |
20K02003
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
太宰 潮 福岡大学, 商学部, 准教授 (60526391)
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研究分担者 |
西原 彰宏 亜細亜大学, 経営学部, 准教授 (10634272)
鶴見 裕之 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (70581198)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | サブスクリプション・サービス / 顧客満足 / カスタマー・リレーションシップ・マネジメント / リテンション / プライシング |
研究実績の概要 |
研究実績としては、研究代表者がメインテーマにおける紀要論文を1本、査読付き論文を2本の計3本の成果をあげ、研究分担者も各自が関連領域の査読付き論文を1本ずつ記すなど、多くの成果を残すことができた。 研究代表者による成果についての詳細は下記の通りである。【成果①】:サブスクリプションを利用する消費者特性についての論文を2021年6月に、福岡大学の紀要論文(福岡大学 商学論叢)に掲載、発行した。【成果②】:サブスクリプションと顧客満足についてのレビュー論文を、査読付き論文として、日本ダイレクトマーケティング学会の学会誌「Direct Marketing Review」に、2022年3月に掲載、発行した。【成果③】:前年度に4つめの成果として示した、オリコン社の顧客満足度調査についての実証論文を、査読付き論文として、日本マーケティング学会のメイン学会誌「マーケティングジャーナル」に、2022年1月に掲載、発行した。本論文は当該号のPrefaceにおいて「結果として示される(中略)グラフは示唆に富んでおり,研究者にも実務家にも,一読をお勧めする,きわめて有益な論考である」と評価され、また、J-Stageにおける本ジャーナル内における論文アクセス数ランキングで3ヶ月連続2位となっており、多くの人に参照される論文となっている。 成果③は成果②のレビューと共に、研究計画時にRQの一つ目として示した「サブスクリプションにおける顧客価値と満足の構造は既存の理論とどう異なるのか」と、3つ目に示していた「サブスクリプションにおける消費者・顧客との関係性はどのように築かれるべきか」についてはその大部分を達成したと言ってよい状態である。 論文以外にも研究代表者によるサブスクリプションについての学会発表を部会発表と全国大会で計2本、関連分野であるオムニチャネル領域で書籍を分担執筆ながら1冊刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず区分を「おおむね順調に推移」とした理由は、研究実績概要で示したとおり、何本もの論文を、しかもその中の複数は査読付として出版できたこと、さらには概要欄の成果③のように、評価の高い査読論文を発行できたためである。 昨年度から現在に至るまで継続して、研究代表者は隔週か月一度の頻度で価格研究の権威である学習院大学・上田隆穂研究室で議論を重ねると共に、研究分担者と共に「オムニチャネル研究会」で同じく月1回以上の頻度で研究会を重ねており、この体制は少なくとも次年度末まで継続する予定である。 昨年度の進捗状況で報告したサブスクリプション・サービスを実際に展開する企業のデータは借用済み、その分析も基本的なところは終了しており、顧客の継続に与える要因などを分析している。ただし、サービス展開初期の企業であることから、その分析結果を一般化、普遍化できるかを議論中である。 また、詳細は「今後の研究の推進方策」にて述べるが、日本マーケティング学会のリサーチプロジェクトにおける活動で、SaaS&サブスクリプション・サービスのプライシングを専門とする企業とコネクションができ、現在同社と共同研究をスタートさせるべく、準備を進めている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度中には、進捗状況で述べたプライシング専門企業の共同研究における分析を実施する。その企業がサブスクリプションのプライシングに対して顧客調査を行っていることから、そのデータを借用するためのNDAなどの形が整い次第、分析に入る。2022年度の前期のうちにスタート予定であるが、この共同研究によって、実際のサブスクリプション・サービス提供の支払い面と、リテンションや顧客満足との観点に大きく寄与する研究が実施可能となる。この共同研究における分析は2022年度の中盤から後半にかけて行い、年度の後半から末頃にかけて学会の全国大会へエントリーをする研究として仕上げることで、2023年度中前半の全国大会レベルの発表と学会誌への論文投稿を予定する。 また併せて本年度中に、RQの2つめを実証すべく、サービス支払価格の知覚と顧客便益に関するアンケート調査を実施予定である。顧客は享受可能な価値を十分に受けていない可能性が高く、またその支払い価格を正確に認識しているとは言い難い状況にある。従ってアンケートでは、月数百円や千円台、数千円という支払価格が月次に支払う金額の中で相対的に小さく感じられること、またサービスを限定した上での利用実績から、顧客が享受する価値と便益に差があり、十分にそれを得ていない顧客がいるという仮説を実証する目的を含めてアンケートとその実証を行う。本分析も、上の共同研究と同様に次年度の学会発表と論文化を予定する。 上記共同研究の分析やアンケート分析の結果は、もしコロナの状況が改善され、Informs, EMAC, Global Marketing Conferenceなどの海外学会発表の道が開かれた場合は、2022年度中のcall for paperにエントリーをし、2023年度の発表を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来は2021年度中にアンケートを実施するところであったが、進捗報告と今後の予定に記した通り企業とのコネクションができていったため、2021年度中のアンケート実施が2022年度にずれ込むことが想定される。また、コロナによって旅費が想定通りに使えないため、一部を外部データの購入等にあてる可能性がある。
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