2023年度はトークンの会計問題に関連して、日本(実務対応報告第45号 資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い)でもアメリカ(会計基準更新書2023-08「暗号資産に関する会計処理と開示」)でも新たな会計基準が設定されるなど、制度会計上の整備が進んだ。それに伴い、必ずしも基準そのものに反映されてはいないものの、具体的な情報や議論が表に出てきている。 実務対応報告第45号はいわゆるステーブルコインの会計処理に関するものであるため、むしろ2023年の税制改正に関連して公表された2022年の第490回企業会計基準委員会議事概要別紙のほうが、本研究の課題の一つである自己割当トークンの会計処理に関しては重要な文書であった。 アメリカの暗号資産に関する新しい会計基準も、自己割当トークンを範囲から除外するという形で、自己割当トークンの問題が取り上げられており、寄せられたコメント・レターから、実務上の課題をうかがうことができるものとなっている。 トークンあるいは電子記録移転権利については、2022年に公表された実務対応報告第43号「電子記録移転表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い」によって、発行者側での扱いが明らかにされているが、自己割当の場合について、ブロックチェーンや分散型自律組織の特性を反映させた議論が示されているわけではない。 自己割当トークンの会計処理については、連結の範囲や特別目的会社あるいは変動持分事業体に関する従来からの議論に加え、新たにブロックチェーンそのものの支配や分散型自律組織の構造まで視野に入れた新たな議論が必要とされていることが明らかになった。
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