研究課題
本研究の目的は,会計基準の変更が資本市場と企業行動に及ぼす影響について実証分析を行い,貸借対照表を重視する会計モデルの特性を明らかにすることである。まず,本研究は,退職給付とリース取引を題材として,会計基準の変更が経営者の行動に及ぼす影響について,先行研究の整理・分析を行った。退職給付の会計基準の変更によって,退職給付の積立状況が貸借対照表で報告される。そのため,経営者は,市場参加者の評価や債務契約などの影響を考慮し,退職給付債務を推定するために必要な割引率を裁量的に大きくする可能性がある。また,リース取引の会計基準の変更によって,オペレーティング・リース取引(OL取引)は,原則,貸借対照表で認識されるものの,1年未満のOL取引は費用処理される。そこで,経営者は,長期のOL取引を減らす一方で,短期のOL取引を増やすことによって,OL取引のオンバランス化を回避する行動をとるであろう。次に,本研究は,退職給付会計基準の変更が資本市場に及ぼす影響について分析した。とくに,退職給付の認識と開示の差異が価値関連性に及ぼす影響について実証分析を行った。分析の結果,注記で開示される退職給付の積立不足額と財務諸表本体で認識される積立不足額は,ともに価値関連性を有するが,市場参加者は,財務諸表本体で認識される退職給付情報をより重視して意思決定を行うことが明らかとなった。また,市場参加者の情報処理コストと会計情報の信頼性の観点から,市場参加者の評価が認識と開示の間で異なる要因について検証した。その結果,市場参加者の情報処理コストが退職給付の認識対開示と株価との関連性に大きな影響を及ぼすことを明らかにした。これらの結果は,市場参加者の情報処理コストが,退職給付の認識と開示の差異に対する市場参加者の評価に大きな影響を及ぼすことを示唆している。
すべて 2023
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Journal of International Accounting, Auditing and Taxation
巻: 50 ページ: 100524
10.1016/j.intaccaudtax.2023.100524
企業会計
巻: 第75巻第3号 ページ: 124-125
巻: 第75巻第4号 ページ: 68-69