研究課題/領域番号 |
20K02009
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
榎本 正博 神戸大学, 社会システムイノベーションセンター, 教授 (70313921)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 経営者交代 / 利益マネジメント / 財務会計 |
研究実績の概要 |
経営者交代は経営者を規律付けるコーポレート・ガバナンスの仕組みとして経営者報酬とならび重要な機能を果たしている。本研究は,コーポレート・ガバナンス機構が変容するもとで,経営者が交代時に利益マネジメントを通じて会計情報の質にどう影響を与えるかを調査し,そこから経営者が実施する会計実務の背後に存在する規則性の推移を解明することにある。そのためには,以下の2点に注目する。 (1) 経営者交代の実態を把握する。 (2) 経営者交代と会計情報の関係を明らかにする。 上記の目的に沿って,まず一般事業会社の経営者交代のデータの整理を最新のデータまで行った。併せて銀行の2003年から2021年までのわが国の銀行の経営者交代に関し,まず経営者の退任時の年齢,在任期間,退任後の役職,新任経営者の年齢,在行期間,経歴等を分析した。そこでは退任経営者の半数以上が代表権を持つ会長に就任していることがわかった。また新任経営者は平均27年在行後に就任し,就任時の平均年齢は59歳であった。また経営者交代があった銀行とない銀行を単純比較した。そこでは利益マネジメント研究で用いられる異常な貸倒引当金繰入額に着目すると,不良債権対貸出金比率の高い強制的交代が発生する銀行において,退任1年前に退任経営者が大きく貸倒引当金を積み増しており,利益を押し下げる動きがある。そして前任経営者の退任後に有価証券売却損を計上するといった特徴がある。銀行においては退任前の会計的裁量行動,退任後の実体的裁量行動が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症等による校務負担等管理業務の増大,さらにデータの収集に想定より時間を要したことによる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は経営者交代についての最新のデータに更新し,利益マネジメントとの関連を分析する。さらに銀行についても一般事業会社と同様に分析を進めていく。 具体的には会計業績指標が経営者交代との相関(業績-交代感応度)の推移を検討する。そこでは株式所有構造や取締役会構成による業績感応度の相違と変化が検討される。これは以降の分析の基礎になる。 この結果を踏まえ経営者交代と利益マネジメントの関係に対する株式所有構造影響を分析する。株主については,国内外機関投資家,経営者,持ち合い株主を含む安定株主,銀行(いわゆるメインバンク),個人投資家などが考えられる。 また取締役会の改革との関係の分析についても検討する。例えば取締役会の独立性(独立社外取締役比率)に焦点を当てることが考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により出張ができなかった。 一部データベースを他予算で購入できた。
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