研究課題/領域番号 |
20K02012
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
浅野 敬志 東京都立大学, 経営学研究科, 教授 (30329833)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 会計学 / 財務会計 / 国際会計 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、会計情報の複雑性とその影響を分析し、負の影響がある場合はその軽減策(自発的開示)を明らかにすることにある。本年度はサステナビリティ情報開示が財務情報開示よりも複雑にならざるを得ない点、およびサステナビリティ情報開示に関する多くの基準やフレームワークが策定され、情報の作成者と利用者の双方に混乱を招いている点などから、主にサステナビリティ情報開示に焦点を当て、会計情報の複雑性に関する研究を進めた。その成果は、国際会計研究学会スタディグループの最終報告書および証券アナリストジャーナル等に掲載されている。 本年度明らかになったのは次の5点である。①環境、社会分野の情報開示が不足しており、それらの評価もESG評価機関間で差が見られる。②ESG評価機関のESG評価手法は複雑であり、評価・調査項目、評価の視点、使用する情報、項目ごとのウエイトなどの点で差が見られる。③年々、企業のサステナビリティ情報開示が進み、企業のESGパフォーマンスも高まり、ESG評価の不一致も縮小している。④企業のサステナビリティ情報開示の拡充がESG評価機関間のESG評価の不一致を狭める効果がある。⑤ESG評価の不一致が狭まるには、環境、社会分野における各評価の不一致を狭める必要があり、そのためには、両分野における情報開示の拡充が有効である。 現在、世界的に統一されたサステナビリティ開示基準が作成されようとしている。この開示基準によって、サステナビリティ情報開示が拡充することは容易に想像できるが、これがサステナビリティ情報の価値関連性につながるかどうかは、企業の努力とともに、GPIFによるESG評価機関へのモニタリングや金融庁や経済産業省など行政機関のサポートも欠かせない。サステナビリティ情報開示のグローバル化が進展したとしても、ローカルな制度の役割が減じることはないと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、複数のESG評価機関からESGスコアデータを入手し、データ整理を行ったうえで実証分析を行い、その成果を単著および共著の論文として公表することができた。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、別のESG評価機関のESGスコアを追加したり、環境、社会、ガバナンスといった分野ごとの研究を深掘りしたりして、本研究に関連した研究をさらに進展させる予定である。また、国内外の学会や研究会に参加し研究発表を行ったり、国内外の査読誌に論文を投稿し、論文掲載に向けて最善を尽くしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、当初予定していた複数の国内外の出張が取りやめになり、今年度の旅費の支出がゼロとなった。次年度はコロナ禍が収束したこともあり、国内外の学会に積極的に参加して最先端の知見を習得するする予定であり、旅費に資金を充てたいと考えている。また、実証研究をさらに進展させるため、複数のESG評価機関のESGスコアデータの購入、CSR総覧などサステナビリティ関連データの購入、データ整理・分析するためのPCの購入を予定しており、物品費にも資金を充てたいと考えている。
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