研究課題/領域番号 |
20K02015
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
松岡 孝介 東北学院大学, 経営学部, 教授 (30453351)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マーケティング・アカウンタビリティ / セールス・マネジメント・コントロール / 非財務業績 / 顧客生涯価値 / アクター・ネットワーク理論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、収益会計理論を基盤に(1)収益形成過程の促進要因を分析し、(2)収益バランスが安定成長に与える影響を検証し、そして(3)顧客生涯価値に基づく資源配分方法を構築することである。 (1)については、2社(A社とB社)の協力を得て実施している。A社に関しては、2022年度に取得したデータに基づいて日本原価計算研究学会の第48回全国大会で学会発表を行なった。また、この発表に基づく英文草稿を作成して、在外研究の受入教官(Prof. Ying Zhu, University of South Australia)とのディスカッションを行なった。さらに、Prof. Zhuの助言に基づいて、研究協力企業のセールスマネジャー2名とのインタビュー調査を実施した。また、英文草稿ではややサンプル数に限界があったため、A社のCIOに追加データの収集を依頼し、2023年度の早いうちに提供いただけることとなった。B社に関しては、2021年度に続き2022年度も顧客満足調査及び従業員創造性調査を行った。なお、従業員調査の方は秋池篤准教授(東北学院大学 経営学部)の協力のもと実施した。 (2)は、2021年3月に執筆した草稿に基づいて日本会計研究学会 第100回 東北部会で発表を行った。また、原稿に改訂を加えた上で、2023年2月にUniversity of GlasgowのProf. Danture Wickramasingheを訪問してディスカッションを行なった。欧米有力誌への投稿に向けた具体的な方針を決めることができ、2023年度に更なる改訂版を作成することとなった。 (3)は2021年度に行ったC社の分析結果(価格設定が顧客生涯価値の基礎となる顧客ロイヤルティに及ぼす影響)に基づく論文がJournal of Business Researchで出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は着実な進展を見せた。2021年度の「実施状況報告書」の「今後の研究の推進方策」に照らしてみると、やや遅れの発生した部分もあるが、総合的には概ね順調に進展していると評価する。 (1)は、2021年度の「今後の研究の推進方策」に記したとおり、A社の人事データに基づいて学会報告を行うことができた。また、インタビュー調査と追加データの収集も進んでおり、ブラッシュアップは着実に進んでいる。さらに、海外共同研究者(Prof. Zhu)を得ることができたという点では、当初予期していなかったほど研究内容が充実してきていると感じている。B社における顧客及び従業員調査も計画通り実行することができた。 (2)も海外共同研究者(Prof. Wickramasinghe)を得て原稿に大きな改善を加えることができたという点では、計画外の充実した進展があったと言える。海外共同研究者の助言は本研究の管理会計理論への貢献に関して非常に有益な内容であり(アクター・ネットワーク理論)、今後の改訂作業を大きく発展させるものと考えている。また、計画外の実績として、日本会計研究学会 東北部会での発表も行うことができた。 (3)はデータ収集は完了しているが、2022年度中に予定していた分析を十分に行うことができなかった。だが、元々この論点は2023年度以降にかけて論文執筆することを予定していたため、大きく遅れているというほどではない。 以上より、総合的にみて概ね順調に進展しているとの評価に至った。
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今後の研究の推進方策 |
5年間の研究計画の4年目であり、論文化を見据えた作業を中心にしていく必要がある。 (1)は、インタビューや追加データを用いた分析を行い、論文の改訂と投稿を考えている。顧客調査と従業員調査は、引き続き継続して行い、データ収集に努める。 (2)は、2023年2月におけるProf. Wickramasingheとの議論に基づいて改訂項を作成し、投稿を目指す。 (3)は、2023年度中に実際に顧客生涯価値を計算するところまで進めたいと考えている。(1)と(2)の課題と並行しての作業となるため、論文化は2024年度に繰り越すことになると想定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額220,024円は、概ね前倒し支払請求額200,000円に相当する。前倒し支払請求は、不確実ではあったが年度末(2023年2月から3月)に英文校閲費が発生する可能性があり、それに備えるために行った。結局、論文執筆には至らず英文校閲は発生せず、前倒し支払請求分だけ余ってしまった。ただ、2023年度以降は論文執筆に研究の重点が移っていくため、次年度使用額は英文校閲費として消化されていく見込みである。
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