1本目の研究であるその他包括利益が借入金利子率に与える影響について、再投稿に向けて昨年度の分析結果を整理し、修正稿を執筆した。査読者からのコメントを想定していくつか追加的な分析を実施し頑健性を確認したが、メイン分析の結果が理論的に整合しない結果でありかつ米国の先行研究とも異なっていることと、差異が生まれた要因としてメインバンクを取り上げた追加分析の結果はサンプル数が大きく減少し、統計的有意性も低いことから、再投稿をしても査読が通らない可能性が高いと判断し、投稿先を変更することにした。 2本目の研究目的は、包括利益およびその他の包括利益の価値関連性を再検証することにある。包括利益の価値関連性を検証した研究は基準導入前後に限られており、分析期間やサンプル数が限定的であった。そこで、基準導入後10年以上が経過し一定のデータ蓄積が行われた今、長期のデータを用いて包括利益の価値関連性を再検証することには意義があると考え再検証を実施した。分析の結果、親会社に帰属する当期純利益のほうが包括利益よりも価値関連性が高いことが判明した。ただし、年度ごとに推定した場合、当期利益の方が優勢であるが、包括利益が高い年もあった。特定の状況下では包括利益のほうが有用な情報となる可能性がある。なお包括利益を当期純利益とその他の包括利益に分解して検証を実施すると、その他の包括利益は統計的に有意ではなく追加的な情報内容はないという結果であった。上記分析結果を整理して、論文の執筆を開始している。
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