研究実績の概要 |
本研究は、英国、アメリカ、そして日本において誕生した初期の時代における監査の構造と特徴を、受託者が委託者に対して負っている受託責任という準拠枠から考察した監査の世界史研究である。この研究で取り上げた英国の監査史例は、(1)中世英国の王室財務省(Exchequer)の監査、(2)中世英国の荘園監査, (3)中世英国のギルド監査、(4)英国東インド会社の監査、(5)英国会社法(1856年会社法まで)の計算書監査である。 アメリカにおける監査史例は、(6)アメリカ植民地において行われた国家(Massachusetts Bay Company)における監査、(7)アメリカ植民地において行われた民間の商会(William Prentis Company)の監査、(8) 19世紀中頃の鉄道会社において行われた監査, (9)20世紀前期において行われた信用監査(貸借対照表監査),(10)1933年連邦証券法下で行われた財務諸表監査である。 日本における監査史例は、(11)徳川幕府(初期)下で行われた勘定吟味役監査、(12)徳川時代初期の商家三井家て行われた監査,(13)徳川後期に行われた近江商人中井家の監査,(14)明治期初期の銚子汽船会社の監査, (15)三井銀行(私盟会社)における監査, (16)明治23年法下の監査役監査, (17) 会計検査院設置当時の監査, (18) 戦後の地方自治法制定時点で行われた地方自治体監査、(19)戦後の証券取引法制定初期における「会計制度監査」と「正規の監査」である。 これらの監査史の分析は、研究の最後においてまとめられている。なお、本研究は、監査角という独立の学問領域を模索する中で行われており、最後に、「監査学」の学問体系が示されている。その中に、監査史研究が位置している。
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