研究課題/領域番号 |
20K02030
|
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
菅原 智 関西学院大学, 商学部, 教授 (40331839)
|
研究分担者 |
角ヶ谷 典幸 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (80267921)
金 鐘勲 専修大学, 商学部, 講師 (10801566)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 外国語効果 / 社会的圧力 / 専門的判断 / 会計教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、経済社会のグローバリズムが進む中、多様な文化的背景、国籍や言語を有する者が、共に専門的会計判断を行うに際して、1)影響を与える文化的・言語的要因を特定及び影響プロセスを理論化し、2)質の高い判断結果を達成するために求められる会計実務や会計教育がいかなるものかを明らかとすることにある。 現在、財務諸表作成時に準拠するIFRSは原文の英語と日本語訳があり、本来は利用者がどちらを用いて判断しても、同じ結果になるはずである。しかし、近年の心理学における研究では、同じ内容を母国語と外国語を用いて解釈すると判断結果が異なるという外国語効果 (Foreign Language Effect)という現象が存在することが明らかとなっている。この効果が実在するのであれば、日本語と英語のIFRSを用いて専門的判断を行う会計においても大きな問題となる。本研究では、職業会計士や他の財務諸表利用者を対象とし、シナリオを利用した実験研究を実施する。 以上のような研究目的に基づき2020年度は、先行研究の収集と整理、データ収集のための質問票の作成、質問票を用いたデータ収集の実施、収集したデータの分析を行った。分析結果は、社会的圧力を受けている場合に、外国語を用いた時には、母語を用いた時と比較すると、被験者は社会的圧力の影響が専門的判断に及ばないことが明らかとなった。また、外国語を用いた場合には、専門的な判断に関して、社会的圧力によって生じる自己抑制力の減退を低減する効果の存在を明らかにした。これは設定した仮説を有意に証明する結果であり、これまでの先行研究の発見や議論を精緻化する結果を示すことができた。なお本論文は、2021年1月には、投稿した国際ジャーナルから招待講演を受け、オンライン国際学会でも報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の研究活動の進捗状況は、おおむね順調に進展している。データ収集は、当初の予定では対面による被験者からの質問票調査を行う予定であったが、新型コロナウイルス蔓延の影響により、対面による質問票調査をオンラインによる調査へと変更した。質問票実施のためのインストラクション、質問表実施後の解説については、オンディマンド型のビデオを作成し、被験者が最も都合の良い形で質問票調査に参加できるように努めた。この結果として、分析に必要な十分な数のデータを得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方向としては、2020年度に集めたデータの分析を進め、論文を完成させることである。完成した論文は海外ジャーナルに投稿し、出版を目指す。また今回の研究の過程で出てきた新たな課題について、新しくデータ収集を実施し、分析することも考えている。次に実施するデータ収集は、より詳細な分析を実施したいと考えているため、多くの大学から被験者を募り、分析を行っていきたいと考えている。
|