研究課題/領域番号 |
20K02038
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
中田 範夫 山口大学, 経済学部, 教授(特命) (90146142)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 新型コロナウイルス / 財務業績 / 非財務業績 / 総合医療センター / こころの医療センター |
研究実績の概要 |
次の2つの研究を行った。一つは、「新型コロナウイルス感染症感染下における病院経営-地方独立行政法人山口県立病院機構のケース-」という論文を作成したことである(この論文は、報告書として作成されたうちの第2章分である)。もう一つは、厚生労働省が2019年9月に発表した全国424病院(再編統合を要する公立病院・公的病院。後に440病院程度に修正)の郵送調査を行う前の段階として山口県内の該当病院に対する聞き取り調査を実施したことである。 前者については、山口県立病院は自治体病院の中では「極めて良好な財務・非財務業績」を示している病院の代表として、平成25年度から令和2年度までの財務及び非財務業績を表示し、そしてその中でも特に令和元年度と令和2年度のそれらを表示し、新型コロナウイルスが病院経営に対してどのような影響を与えたかを明らかにした。その結果、財務業績については次のことが明らかとなった。①山口県立病院は令和2年度のコロナ禍においてこれまでの歴史において最大の当期純利益を示したこと。②平成23年度から独立行政法人に組織替えしたが、これ以降今日まで平成27年度を除いて当期純利益がプラスであること(平成27年度については退職給与引当金の不足に対して6億円を超える一括計上をしている)。③県立病院を「総合医療センター」と「こころの医療センター」に区分しさらに詳細な分析を行ったこと。 次に後者においては、最終年度の郵送調査のための聞き取り調査を行った。その結果、次のような状況が明らかになった。当初は(新型コロナウイルスの存在しない状況)令和2年度のうちに改革・改善案を提案するように厚生労働省が指示していたこと。しかし、新型コロナウイルスの発生により、424病院を含めて日本の総ての病院・診療所はコロナ対策が最重要な課題となり、厚生労働省は改革・改善については様子見であること
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究テーマは「公立病院改革の課題-公立病院以外の病院との比較より-」であった。この課題についてはこれまでの研究成果によりおおよそ解決している。すなわち、公立病院においては8つの要因が費用収益率、在院日数及び病床稼働率に対してどのような影響力を有するかを明らかにした。同様に公立病院と非公立病院との比較を8つの要因を中心に実施した。その詳細については「公立病院と非公立病院の比較-基礎データの観点から-」(山口経済学雑誌、第69巻第6号、令和3年3月、pp.15-60)を参照のこと。 最後に残った課題は厚生労働省が公表した424病院(後に440程度病院)の改革・改善に関する郵送調査である。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度において県内の改革・改善を公表された病院から聞き取り調査を行っている。これを基にして郵送調査を実施する計画である。ただし、現在もまだ新型コロナウイルス感染症感染下であること、そして該当する病院の再編統合がその病院が含まれる医療圏の他病院の動向(地域医療構想調整会議)と関連するなど簡単には決着が着かないような状況も見られる。しかし、このような状況下でもすでに再編統合案を示している病院もある。 郵送調査では、上記のような状況を配慮して各病院の再編統合状況の進捗度を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度に当該課題について助成金を申請した時点では新型コロナウイルスは少なくとも国内では発見されていなかった。そして、令和4年3月末まではコロナウイルスが数か月間落ち着いた時期が見られなかった。今回の課題について令和4年度は最終年度なので、令和3年度の未使用額23,000円を含めて全額郵送代(消耗品費)として使用する計画である
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備考 |
上記の論文は『新型コロナウイルス感染症流行下における医療・福祉施設の経営実態と今後について:山口県の事例から』と題する報告書(2022年2月出版)の第2章として書かれたものである(山口大学大学院経済学研究科、医療・福祉経営コース委員会)。
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