研究課題/領域番号 |
20K02043
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
檜山 純 北海道科学大学, 未来デザイン学部, 准教授 (90800772)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 監査の基準 / レトロアクティブ / 期待ギャップ / 監査人の責任 / 合理的な期待 / 監査の失敗 |
研究実績の概要 |
監査の失敗,虚偽証明に関連する事例において,被告人である監査人の抗弁と証拠から,「当時の監査の基準」の準拠に準拠しているか,その監査人の失敗であるかどうかを,レトロ・アクティブアプローチにもとづき検証した。 「当時の監査の基準」の範囲が,すべての監査人が準拠する「監査基準」から委任された部分であったことを,IXI事件など,法学の先行研究で取り上げられている事例から明らかにした。さらに,監査の失敗が類型化でき,それぞれのモデルとなるパイロットケースの分析を行った。虚偽証明とはなっていないが,正当な注意を行使できなかった事例は,これまで検討の対象とされることがなかったため,監査事務所などの品質管理とあわせて事例を検討した点で,研究が進んでいる。 ここまでの令和3年度から4年度にかけての研究で構築してきた事例分析のための類型は,令和4年度会計理論学会賞(論文部門)の受賞として,一定の評価を得た。令和4年度は,枠組みのさらなる精緻化の具体例の検討を積み重ねてきた。成果の一部は,令和4年度の会計研究学会全国大会で報告・公表している。 なお,コロナ禍で第一次資料へのアクセスに制限が生じた点を補完するために,合理的な範囲を明らかにする目的で立法の趣旨まで遡る歴史的検討を行った。判決は,確かに裁判官の判断による。しかし,必ず裁判官が根拠とした条文があり,それらには立法の趣旨が考慮されている。本年度は,監査の先行研究と異なる視点での法学分野の歴史的文献を分析することができた。これらの成果の一部は,学会誌および共著出版の原稿として,令和4年中に投稿をしている。後者の出版は,編者急逝により,令和5年度以降に,別の形での公表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,判決および裁判の証拠書類をもとに事例分析をすすめたケースとして,『研究年報経済学』で成果を公表した。ただし,昨年度に引き続き,感染蔓延下にあった札幌近郊からでは,コロナ禍の出張がたびたび制限された。このため,事例分析にあたり,データベース利用,判決や2次資料の分析を主とせざるを得ず,実地調査の多くは令和5年度に持ち越された。ただし,学界・実務界との意見交換などはZoomの利用である程度まで補完できた。また,元となる諸法の根拠,わが国の責任を抽出するための国際比較など,地方でも可能な研究が進められて補完できたため,「おおむね順調」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,新型コロナ禍の直接的な影響によって,一次資料の閲覧ができず,データベースでの補完となったため,顕著な進展は叶わなかった。ただし,代わりに,データベース利用により,リスク・アプローチ下における資本市場(証券市場)の監査人の責任について,諸法からの国際比較研究が進み,本研究の理論的根拠の精緻化が進んだ。かかる成果のうち,本年度に投稿,一次査読済みで次年度掲載となる成果もある。 今後は,コロナ禍での多くの制約が緩和される見込みであることから,未実施の調査を遂行し,総括する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の収束が遅れていたため,研究期間の延長を予定し,次年度へ調査とデータベース利用,現地への出張に必要な金額を残した。
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