研究課題/領域番号 |
20K02046
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研究機関 | 麗澤大学 |
研究代表者 |
鈴木 大介 麗澤大学, 経済学部, 准教授 (00535536)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 資産負債アプローチ / 収益費用アプローチ / 実現主義 / リスクからの解放 |
研究実績の概要 |
本研究は,国際的なジャーナルで論文を掲載させるという最終的な目的を達成するために、3つの段階から構成される.財務会計でしばしば議論される資産・負債アプローチと収益・費用アプローチについて,論理に因果関係が存在するかを明らかにするのが第1段階の作業であり、当初、1年を予定していた.この段階は研究全体の基礎をなす部分であり,第2段階の作業はこれに依存しているため,あらためてストックとフローの関係性を論証し,(a)フローのみからストックを定義できず,ストックからフローを定義するしかない点,(b)純資産のみから資産や負債を導出できず,資産と負債の差額を純資産とするしかない点を確かめた.(b)については、資産や負債の定義によっては純資産のみから資産や負債を導出することが不可能ではなさそうだが、現実的な定義を与件とするとやはり困難があることが論証できている。 そのうえで,先行研究をもとに論者によって異なる用語の定義を整理し,ふたつのアプローチが,実務的な見解だけか,他の要素と一定の因果関係があるかを判断し,理論として耐えられるかを明らかにすることが計画されていた.ただ、先行研究の論者が想定をこえて多岐にわたり、十分なサーベイができているとはいえないのが現状であり、研究が遅延しているものの、この第1段階を十分にやることが次の段階の質を決定するため尽力していきたい。なお,議論の発散を抑えるため,クリーン・サープラスを仮定し,財務諸表の構成要素の定義,利益の計算方法,資産評価といった主要な論点に範囲を制限していたが、研究会等では、そうした制限は議論の説得力を下げる可能性があると指摘されており、修正できるか今後検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
財務会計でしばしば議論される資産・負債アプローチと収益・費用アプローチについて,論理に因果関係が存在するかを明らかにするのが第1段階の作業であり、当初、1年を予定していたが、以下の3つの要因により、当初の予定よりも遅れている。 ひとつめは、コロナの影響もあり、授業の準備にこれまで経験のない動画撮影等の作業が加わり、相当の時間を費やしてしまった。また、学内業務で当初の想定ではなかった役職についたことで、コロナ対策等、想定をこえる時間を消費せざるをえなかった。また、別の研究テーマについて、学会の特別委員会に加えていただいたことから、そこにもある程度の時間を割かなければならず、当初の計画からそれる要因となった。 ある程度の先行研究のサーベイは進められているものの、なぜ資産負債アプローチと収益費用アプローチの議論の大半が対立構造で議論されているのか、そこにどれだけの学術的な意図があるのかいまだに解明できていない。本来は、こうした論点を明確に論証しなければならないが、上記の理由から、本来では第一段階で論文を執筆しなければならないがそれができていない。
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今後の研究の推進方策 |
第2段階では,因果関係のもと,リスクの概念と主要な基礎概念を結びつけられることを明らかにすることが意図されているが、第1段階の遅延がここに影響を及ぼすことは明らかであり、対策をしなければならない.学内業務は役職についてしまった以上、ある程度はやむをえないが、それでも授業の準備等はある程度効率的に作業できるようになってきた.学会の特別研究委員は今年度で終了するため、これ以上のリスクはない.財務諸表の構成要素と関連させて,OUとEUのリスク概念を整理し,第1段階で検証したストックとフローの論理に矛盾がないか検証する作業は、ある程度、サーベイの作業をしながら理論の構築はできる.実現主義,支配,費用配分といった種々の基礎概念とその関係を整理し,ふたつのリスク概念がどこまで基礎概念を説明できるか,リスク概念と基礎概念の関係を明らかにすることも同様に、ある程度の作業は可能であろう。一定の条件下,第1段階で検証した従来の資産・負債アプローチと収益・費用アプローチの議論を,第2段階で構築したリスク概念にもとづく理論ツールのもとで統合(もしくは代替)できることを明らかにすることができれば、当初の第2段階の作業は終了するため、初年度の遅れを2年目で挽回したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響があり、学会発表ができず、また、他の学会活動の負担や、学内業務も役職についたため負担が想定よりも多くなり、研究に遅延が生じているため。とはいえ、学会活動は今年度で終了するため負担の軽減となり、本来の活動は、次年度に活動できると予定している。
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