研究課題/領域番号 |
20K02047
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
村上 裕太郎 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (30434591)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 交際費 / 損金不算入制度 / 契約理論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、世界各国で導入されている交際費の損金不算入制度を分析的に検討することである。損金不算入となる交際費を世界的に比較すると、国によって税制が異なることがわかる。交際費の全額を損金算入する国、全額損金不算入とする国、一部のみ損金算入とする国など、国によって交際費の損金算入が異なる。 具体的に、本研究の研究目的は大きく2つある。第一に、損金不算入割合は報酬契約にどのような影響を与えるのか。第二に、より重要なこととして、交際費の損金不算入割合はなぜ国や時代によって変化してきたのか。本研究では、税務当局の行動を考慮し、損金不算入割合を内生化することで、この問題を説明する。本研究の主な結果は以下の通りである。損金不算入割合が外生的な場合、法人税率や損金不算入割合が上昇するとエージェントへの努力インセンティブの効率が低下するため、プリンシパルはインセンティブ係数を低下させる。一方、損金不算入割合が内生的な場合は、法人税率の上昇はインセンティブ係数を上昇させるが、これは損金不算入割合が外生的な場合とは逆である。理由は、損金不算入割合が内生的な場合に法人税率が上昇すると、税務当局は損金不算入割合を下げることで企業活動を活性化し、税収を確保しようとするためである。 上記の研究成果を、2022年5月にノルウェーで開催されるヨーロッパ会計学会にて報告することが確定している。また、2022年3月に書き上げた論文をJournal of Accounting and Public Policy誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍という特殊な状況において、対面での学会・研究会報告はなかったが、オンラインの研究会にて報告し、さまざまなフィードバックを得ることができた。当初の予定では、2年目に海外学術誌に論文を投稿する予定であったが、2022年3月に論文をJournal of Accounting and Public Policy誌に投稿することができたため、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず、2022年5月にノルウェーで開催されるヨーロッパ会計学会にて論文を報告することが確定している。また、3月に投稿した論文の査読結果が3か月ほどで送られてくるため、そこでの査読者のコメントを反映させ、R&Rとなった場合は再投稿する。もし、残念ながらリジェクトとなった場合は、論文の問題点を修正したのち、新しい学術誌に投稿する。どちらの場合も、3年目の終了までに投稿を完了する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、令和3年度に3度、国際学会にて論文を報告予定であり、そのための出張旅費を予算に計上していた。しかしながら、新型コロナウイルス感染拡大を受け、国際学会が中止・延期・オンライン化したため、出張旅費がゼロとなってしまった。いつまでこの状況が続くか先行き不透明であるが、令和4年度は少なくとも2回、参加予定の国際学会が対面で開催される予定である。
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