研究課題/領域番号 |
20K02054
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
松浦 総一 立命館大学, 経営学部, 准教授 (50554317)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 税負担削減行動 / 評判コスト / ブランド価値 / 分位点回帰 |
研究実績の概要 |
研究課題「評判コストが税負担削減行動に与える影響に関する実証研究」の目的は,企業によるブランド価値の構築と,税引後キャッシュ・フローを最大にすることを意図した税負担削減行動という2つの企業価値最大化行動の関係を検証することにある。 本年度の前半は,当初予定していたフィンランドのアアルト大学への学外研究が渡航不可のため中止となり,また大学閉鎖等の研究資源への物理的な制約が大きかったことため,先行研究の綿密なサーベイを中心に行った。過度な税負担削減行動はブランド価値を毀損する可能性がある,という二律背反の関係となることがある,という仮説を検証した先行研究をサーベイすることで,総じて企業が保有するブランド価値が高ければ高いほど,過度な租税負担削減行動が公になることによるブランド価値の毀損が企業にとっての評判コストとなり,租税負担削減行動を思いとどまらせる効果がある,という証拠が報告されていた。 フィンランドのアアルト大学が保有するデータベースを用いて共同研究として実施する予定だった,全世界の上場企業財務データを利用した評判コスト研究は,コロナ禍による多くの制限により実行できなかった。具体的には,ビューロバンダイク社のOrbisデータベースを用いた世界中の上場・非上場企業の財務データや定性データから,租税負担削減行動が公表されることにより企業価値低下の懸念と,租税負担削減行動による税引後キャッシュ・フローの関係を検証する研究は,フィンランドへの渡航・滞在の制限が実質的になくなったときに再開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は学外研究制度によりフィンランドのアアルト大学ビジネススクールに客員研究員として滞在し,アアルト大学保有の大規模データベースを用いた共同研究を行う予定であったが,海外渡航・滞在の制限により実現できなかったため,計画を修正せざるを得なくなったため,やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に日本会計研究学会特別研究委員会の最終報告書に掲載する単著論文として「評判コストが租税負担削減行動に与える影響に関する実証研究 ーCBバリュエーターを用いた分析」を発表する。さらに,特別委員会の研究成果物として現在における実証的税務会計の到達点を整理した書籍を執筆中であり,分担箇所である組織再編税制や研究開発税制を対象としてレビュー論文を執筆している。また,これらのテーマに関連した評判形成と裁量的会計行動との実証研究をすすめ,3月に行われる予定の国際学会において報告・投稿予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による渡航制限・移動制限により,出張のために予算を執行できなかったため繰越額が生じている。この繰越額については,今後国内外での出張が再開されたときに使用する予定である。
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