ブランド資本が税負担削減行動に与える影響を定量的に分析した研究の成果を、松浦 (2021)、松浦 (2022)、松浦 (2023)として発表した。一連の研究で、評判の代理変数として用いたブランド資本と税負担削減行動の代理変数である実効税率との間に負の関係があることが分かった。さらに評判を蓄積する活動として研究開発という特定の企業行動に注目し、研究開発活動を積極的に行っている企業が極端な財務業績を有している可能性があることも指摘している。 これらの研究の成果として、税コストと財務報告コスト、その他のコストという全てのコストを考慮に入れた税務計画フレームワークにおいて、税コストと評判コストとのトレードオフ関係を明らかにし、企業が蓄積した評判の毀損を回避するために、企業は税負担削減行動を控える、という行動をとることが分かった。 しかしこれらの研究の限界として、評判コストの代理変数の妥当性や測定誤差が深刻であることも明らかとなった。今後は、組織論やマーケティングといった他分野の知見を取り入れ、より適切な評判コストの代理変数を構築することを目指す。
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