研究課題/領域番号 |
20K02055
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
宮宇地 俊岳 追手門学院大学, 経営学部, 准教授 (90609158)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | のれん / 減損認識 / 適時性 / 対価の過払い |
研究実績の概要 |
本研究では、買入のれんの巨額化と過払い部分の資産性とに、考察上の主たる焦点を当てている。1年目にあたる令和2年度は、会計基準設定主体(ASBJ, EFRAG, IASB, FASB, 等)が、買入のれんの事後的会計処理に関するDiscussion PaperやResearch Paperを矢継ぎ早に公表していることから、のれんの巨額化について何が論点となっているのかを再度整理することを試みた。また、のれんに関する会計領域の実証研究上の先行研究サーベイを実施し、経験的事実として、どのようなことが明らかになっているのかを明確化することに取り組んだ。 その結果、海外の査読付き学術誌に掲載されている実証研究の知見として、(1)のれん計上企業の減損認識が適時に行われておらず、のれん計上額が過大になっていること、(2)買収時の対価の過払い部分が大きいと、後にのれんの減損損失を計上する傾向があることが明らかとなった。 また、会計基準主体が公表するDP等からは、(3)減損テストのみの会計基準では、買入のれんの費用化が進まないことから、「減損テストの見直し」と「のれんの償却再導入」の検討を行っていることが明らかとなった。 さらに、(4)公認会計士に対して、のれんに対する認識の質問票調査を行い、その中で「のれんに過大評価部分が含まれているか否か」を質問項目として問うたところ、87.1%(「かなり含まれている」、「含まれている」との回答の合算値)の回答者が、のれんには、過大評価部分が計上されていると認識していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では、令和2年度は、のれんの減損認識や買収対価の過払いを巡る実証成果に関する文献整理を予定していた。先行研究レビューから得られた知見が、次年度以降の実証分析の基礎となると考えている。その点、研究実績の概要で述べたとおり、内外の実証研究に関する文献レビューを進めることはできている。ただし、新型コロナ禍の影響を受け様々な制約を受ける中で、リサーチ・デザインの検討までは踏み込めなかった点で、やや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
会計系の実証研究の先行研究レビューは進んでいるが、ファイナンス系の論文についても整理を行う予定である。また、買収対価におけるoverpayに対する市場の反応等の検証を試みる予定である。先行研究では、アナリストがのれんの減損損失の発生を見抜けていない可能性も指摘されており、巨額な予期せぬ減損発生との関連で、アナリスト予想の視点を加えた分析を行う可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では、令和2年度にデータベース等を購入する予定であったが、先行研究のレビューを経た時点で、実証すべき内容を再検討している。このため、令和3年度に研究費の繰越を行っている。リサーチ・デザインを確定させた上で、必要となるデータベースの取得や研究成果物を英文化する際のプルーフ・リーディング等に充てる予定でいる。
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