研究課題/領域番号 |
20K02062
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
柏尾 珠紀 滋賀大学, 研究推進機構, 研究員 (70414034)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 農村女性 / 農村女性リーダー / 農業技術 / ジェンダー / 生活技術 |
研究実績の概要 |
研究の2年目は、前年度に実施できなかった対面でのヒアリング調査を実施すること、今年度の予定地域の調査を行うこと、および、分析枠組みの理論構築を進めることを目的とした。前年度実施できなかった大都市近郊における対面でのヒアリング調査については、新型コロナウイルス感染症の拡大が沈静化した短期間に集中的に行い、当初計画の半分程度を終えることができた。しかし、相次ぐ再拡大による行動制限のため、地方都市農村部における高齢者へのヒアリング調査については、対面での接触を控えたため多くを延期せざるを得なかった。そのため、計画していた対面でのヒアリング調査をすべて終了することは叶わなかった。また、各機関の女性の農業者リーダー育成そのものが停滞している現状もあったが、諸機関が実施した代替的な対応について把握できたことは有意義だった。これらの資料と都市近郊農村部におけるヒアリング調査を通して、いくつかの興味深い論点を検出することができた。たとえば、女性農業者リーダーが専業的で継続的な農業者とは限らないという点などである。聞き取り調査では技術に裏打ちされた正当な評価がその背後にあると考えられた。このような女性農業者の多様な技術の再評価については、その一部を「伊香立の暮らしと食」『滋賀の暮らしと食-生津集落の調査を中心に-』および、「湖国で育まれた味わい」『湖国の食事』にまとめた。また、いくつかの聞き取り調査を延期したことにより、調査結果のデータ化と検討、関係資料の発掘や収集作業に当初の計画よりも多くの時間を割くことができた。そのため、理論構築に関する資料収集は予定以上に進めることができた。しかし、本研究は聞き取り調査をもとに研究を進めるものであるため、今後は理論と実践の接合に向けて可能な限り聞き取り調査を実施する必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は聞き取り調査をもとに研究を進めるものであるが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のための移動制限により、予定していた地域でのヒアリング調査が実施できなかった。そのため、地方都市部における農村女性の技術の再評価に関する資料収集と現状の把握、各地の農村女性リーダー育成の実態と方向性の把握も含めて、聞き取り調査をせずに行政資料と文献の検討を中心に研究を進めざるを得なかった。この間は各機関の女性農業者のリーダー育成事業が順当に進められていない現状もあった。しかし他方で、その代替的対応の有無から各地域の指向性を知ることができ、考察を進めるうえで重要な視点を見いだすことができた。また、女性農業者の保有する多様な技術については、文献資料から地域類型に基づくデータ化が行えた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、これまで制限をしていた対面での聞き取り調査を慎重に判断しながら行うことで、当初の計画通りに研究を進める予定である。地方都市や農村部での調査にまつわる移動に関しては、無理をすることなく、また、現地と緊密な連絡調整を行うことで実施する予定である。この2年で構築できたオンラインによる調査体制も活用し、他方で、高齢者へは対面での聞き取り調査を行うことで、各地域に賦存する女性の保有技術の実態把握とそれらの可視化、各地の女性農業者の現状、および、リーダー育成システムの有無や特徴の把握に努める。調査データと文献資料や事例を蓄積することで研究を進め、社会的環境と女性の技術保有、女性リーダー育成との関係を明らかにすることを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大防止対策に関する国と府県の移動制限に従い、県外の感染者が少ない農村部への調査を延期した。そのため、旅費、レンタカー代および現地でしか入手できない郷土資料をはじめとする資料の購入費や複写費などの調査関連費を支出しなかった。それにより次年度への繰越金が発生した。今年度は、延期している一部の地方都市農村部での聞き取り調査を実施すると同時に、当初の計画通りの調査と事例検討を実施することで研究を進める。
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