2023年度は、研究実施計画のとおり大規模経営が主流である地方都市および地域における女性農業者について調査し、これまでの調査結果と比較検討を行いながら、全体としての研究のとりまとめを進めた。具体的には、大規模稲作経営地域においてリーダー的な営農活動を行う女性農業者からヒアリング調査を行い、営農の意思決定と女性の技術保有との関係や保有技術の種類に関する資料を収集した。これらの情報をデータ化し社会学、民俗学、ジェンダー論、経済学などの視点を取り入れて類型化しながら、その社会的意義や波及効果、女性農業者の技術活動がもつ地域社会へのインパクトについて検討を進め、女性農業リーダーに共通する資質や技術の抽出と女性リーダーが育成される地域特徴の検討に努めた。大規模な稲作農業経営が主流である農村地域では、社会のなかに男性型の評価基準が定着しており、多様で比較的小規模経営が多い女性農業者の経営は農業としては不可視なままである。この社会的性差が定着した一側面について、「景観から地域をみるー越境する視点から農村調査をしてみようー」『越境する視点から地域をみる』にまとめた。主要な技術を保有する主体の違いが地域農業の傾向や女性農業者の技術評価と密接に関わることが明らかにでき、女性農業者の技術を地道に再評価することなく農村地域社会のなかに女性リーダーを育成するシステムは生まれ難いことも再確認できた。また、女性農業者の多様な技術を可視化するために、「女性農業者の活躍と課題」を業界誌で発表した。農村地域の再編や変化はさらに加速しており、農村RMOが推進される地域では農業者ではない精力的な女性農村地域リーダーも散見される。これらについては現在まとめている最中である。
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