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2023 年度 実施状況報告書

「壁」の増殖に対峙する共存・共在の智に関する探求型フィールドワーク

研究課題

研究課題/領域番号 20K02073
研究機関中央大学

研究代表者

新原 道信  中央大学, 文学部, 教授 (10228132)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード「壁」の増殖 / 共存・共在の智 / 社会的マイノリティ / 探究型フィールドワーク / 臨場・臨床的 / 全景把握的 / 社会文化的な島々 / 国境島嶼
研究実績の概要

本研究の目的は、“異物への過剰な拒否反応”として世界各地で生起する“「壁」の増殖”の現況を把握し、この状況に対峙する〈“共存・共在の智”の存立基盤はいかなるものか、どのように伝達可能となるか〉を明らかにすることにある。「可視的局面」としての“「壁」の増殖”の現況把握および「潜在的局面」としての“共存・共在の智”の探求を可能とするため、“探求型フィールドワーク(Exploratory Field Work)”によるイタリア他での調査研究を遂行することを計画していた。
探求型フィールドワークは、18カ国、28地域での共同調査のなかで構築してきた調査研究の在り方(ways of being)であり、臨場・臨床的(clinical)かつ全景把握的(visionary)という対位的な特徴を持つ。臨場・臨床的の条件としては、「潜在的局面」の把握を可能とする調査地の言語・文化への深い理解が必要となる。全景把握的の条件としてはフィールドワークから個々の知見を位置づける社会理論が必要となる。
今年度は、研究のとりまとめにむけて、1)調査地の事前調査による“「壁」の増殖”の現況への理解と歴史・構造の把握、2)これまでの調査地であるアゾレス、カーボベルデ、メリリャとセウタ、ランペドゥーザ等における“「壁」の増殖”と“共存・共在の智”が対峙する状況についての理解のとりまとめ、3)イタリアで海外共同研究者とのカンファレンスを実施した。
加えて、本調査研究の基盤となっている日本・イタリア・ブラジルにおける地域密着型調査研究の深化を試み、具体的には、立川・砂川地区とサッサリ市サンタ・マリア・ディ・ピサ地区において、都市の内なる“社会文化的な島々”として捉えた相似形の地域密着型研究を推進した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究開始後、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」の影響の残存により、イタリアおよびブラジルでの現地調査を断念せざるを得ない時期がつづいた。しかしながら、当初の困難から体制を建て直しを検討し、本調査研究の主要なフィールドをイタリアに限定し、実地調査と研究報告、意見交換を行った。下記の1)~3)については、おおむね順調な進捗状況であった。
1)ブラジルにおける先住民・ヨーロッパ人・アフリカ人という三つの系譜の“衝突・混交・混成・重合の歩み(percorso composito)”、そこでの“共存・共在の智”の形成、アマゾンの開発による地域の解体・分断、ブラジル内および外部からの影響による“「壁」の増殖”の現況への理解をとりまとめることができた。2)これまでの調査地であるイストリア、フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア、アルプス山間地、アゾレス、カーボベルデ、メリリャとセウタ、ランペドゥーザ等における“「壁」の増殖”と“共存・共在の智”が対峙する状況についての理解をとりまとめた。3)歴史・構造の把握と過去のフィールドワークの理解を組み合わせ、今年度はイタリア現地調査を実現した。イタリア調査においては、①ランペドゥーザ調査のリフレクションに関する報告、②「新型コロナウイルス感染症(COVID-19, Coronavirus Disease 2019)」以前以後の日本とイタリアの福祉システムの比較についての報告などを行った。
これにより、それぞれで地域密着型調査研究を深化させることにより、“「壁」の増殖”と“共存・共在の智”の萌芽を探求するかたちで調査研究を組み直した。

今後の研究の推進方策

過去の感染症拡大の歴史、さらに発生したウクライナ、ガザなどでの紛争の状況を顧慮するなら、従来通りの海外でのフィールドワークの困難さがある、その一方で難民問題に象徴される“「壁」の増殖(proliferation of 'barrier')”は、さらに緊急性が予想される。
日本・イタリア・ブラジルそれぞれのフィールドで、“コミュニティを基盤とする参与的行為調査(Community-Based Participatory Action Research(CBPAR))”をすすめることで対応する。各々のフィールドにおいては、コロナウイルス感染拡大のもとでの、社会的マイノリティ(移民・難民、障がい者、老人・女性・LGBT・子どもたち等)への抑圧移譲・拒絶反応をめぐる現況把握と、そこでの“共存・共在の智”を探求することを追求し、それぞれの知見は、限定的な現地調査、オンライン会議等で交換していく。。
そもそも本調査研究は、国際共同研究――「社会文化的な島嶼」における地域密着型研究:国際的CBPRネットワークの構築(Community-Based Participatory Research in "Socio-Cultural Islands":Co-creation of International CBPR Network)の基礎研究である。日本・イタリアからブラジルへという海外調査の実現は難しくなったが、当初の調査計画の根幹である、各々のフィールドにおける〈調査研究/教育/大学と地域の協業〉を推進し、海外での十全なフィールドワークが可能となる時期に備えることは、十分な意義をもつ調査研究であると考える。

次年度使用額が生じた理由

日本、イタリア、ブラジルそれぞれでの地域調査をすすめ、研究成果の交換を行うための諸経費として計上した。内訳は、地域研究の関連図書、資料整理のためのPC等の備品、データ保存のための外付けHDD、トナーカートリッジ、調査で使用するカメラ・ビデオ等の消耗品である。
また、これまでの調査も含めた写真・動画、フィールドノーツ、デシタルデータ、紙ベースの資料等を整理するため、研究補助、専門的知識の提供への写真として計上した。
次年度中に海外調査が可能となった場合は、海外渡航費を主要な経費として支出する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2024 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [国際共同研究] FOIST/INTHM/Universita' di Sassari(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      FOIST/INTHM/Universita' di Sassari
    • 他の機関数
      3
  • [国際共同研究] MEPES/UFES(ブラジル)

    • 国名
      ブラジル
    • 外国機関名
      MEPES/UFES
  • [学会発表] Mobilita' umana, migrazioni e confini2024

    • 著者名/発表者名
      Michinobu Niihara
    • 学会等名
      Seminario di Laboratorio FOIST per le Politiche Sociali e i Processi Formativi, Universita' degli Studi di Sassari
    • 招待講演
  • [学会発表] Evoluzione dei sistemi di welfare in Italia e Giappone: Elementi per una comparazione2024

    • 著者名/発表者名
      Michinobu Niihara
    • 学会等名
      Seminario di Laboratorio FOIST per le Politiche Sociali e i Processi Formativi, Universita' degli Studi di Sassari
    • 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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