研究課題/領域番号 |
20K02074
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
鈴木 玲 法政大学, 大原社会問題研究所, 教授 (20318611)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 労働運動 / 労災職業病 / 公害問題 / 環境問題 |
研究実績の概要 |
2021年度は、新型コロナウイルス感染拡大により、国内、海外のリサーチができなかったため、文献調査を中心に研究を進めた。アメリカと日本の労働者と労働組合の珪肺やじん肺(とくに石炭じん肺)への対応、および職業病認定をめぐる労働者、経営者、専門家、政府機関の間の政治的過程について入手できる範囲の文献や二次資料に基づいて検討し、アメリカの事例(一部イギリスとの比較)について論文をまとめた。 アメリカの珪肺・石炭じん肺問題についての論文は、社会・労働史および社会学の先行研究に基づいて珪肺と石炭じん肺の定義、職業病としての認知、補償範囲をめぐる論争や紛争など政治的過程の大枠を示し、その特徴を考察した。考察に基づき以下の3つの論点を提示した。①職業病の定義が労使(労資)関係で権力をもつ経営者とそれを支える政府機関の支配的影響を受けたものの、その支配力が時代によって変化したこと、②(①と関連して)一定の状況下において、労働運動などの社会的勢力が職業病の定義に影響を及ぼす機会が存在したこと、③職業病の定義と認知についての専門家の判断がそれぞれの時代の「科学的常識」により制約を受けていたこと。 日本の事例についてもアメリカの事例との比較を念頭に検討を進めた。日本では珪肺法が1955年、石炭じん肺を職業病として認定したじん肺法が1960年制定され、アメリカの連邦レベルの炭鉱労働安全衛生法(1969年制定)より認定が早かった。日本で石炭じん肺の職業病認定がどのような労使関係や政治的文脈でなされたのかについて労働組合の資料などを使い調査をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アメリカの職業病(石炭じん肺)の事例については、先行研究を読み込み、そこから得た知見をまとめることができた。日本の石炭じん肺の職業病としての認定や認定後に生じた問題については、現段階では論文にまとめるまでに至っていない。また、国際比較の視点からの検討も必要と認識している。文献調査から、日本では珪肺と石炭じん肺の区分が明確に行わない傾向を読み取ることができた。他方、アメリカでは、これら2つの肺疾患が明確に区別されていたことが、石炭じん肺の職業病認定を遅らせる要因となった。アメリカと日本の石炭じん肺の職業病認定の過程の異なる経路について検討を進める。そのためには、二次資料だけでなく、炭鉱労働や安全衛生に関する日本国内の一次資料を検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
日本のじん肺(とくに石炭じん肺)の研究を、国際比較の視点から進める。珪肺法、じん肺法の制定やじん肺患者の支援に労働組合や社会運動組織がどのような役割を果たしたのか、労働組合と医師や専門家とどのような連携関係を結んだのか、石炭じん肺が職業病として比較的早い時期に認定されたのに拘わらず、元炭鉱労働者が会社や政府を相手に石炭じん肺の補償を求める一連の裁判を起こしたのはなぜか、などのリサーチクエスチョンに基づき、法政大学大原社会問題研究所や九州大学付属図書館の記録資料館などの資料の調査を行う。また、じん肺問題に詳しい専門家に対するヒアリングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、新型コロナウイルス感染拡大が続き、海外および国内出張ができなかった。そのため計上した旅費を執行することができなかった。22年度は少なくとも国内出張をして文献調査および聞き取りをする予定である。
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