研究課題/領域番号 |
20K02082
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研究機関 | 沖縄国際大学 |
研究代表者 |
桃原 一彦 沖縄国際大学, 総合文化学部, 教授 (40369202)
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研究分担者 |
池田 緑 大妻女子大学, 社会情報学部, 准教授 (40337887)
曹 慶鎬 立教大学, 社会学部, 助教 (20762892)
玉城 福子 沖縄国際大学, 地域文化研究科, 研究員 (20843246)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 受益圏/受苦圏 / 擬似受益圏 / 純受苦圏 / 主体間葛藤/主体内葛藤 / テクノクラート / 沖縄 / 基地問題 / 構造的差別 |
研究実績の概要 |
1.文献研究については、研究代表者、分担者全員によって理論的な所在に関する先行研究を進めた。とくに本研究のキーワード「受益圏/受苦圏」およびその派生概念を取り扱った社会学の文献を中心に概念整理を行ない、定量調査のための作業仮説の設定に向けて議論を行った。また、沖縄の基地問題を含む社会問題、運動と思想、差別論等の文献研究も引き続き行なった。なお、上記研究実績と関連するものとして、代表者と分担者(1名)は、シンポジウム「ポジショナリティと日本社会:日沖関係・ジェンダーを中心に」(2022年3月6日、Zoomウェビナーによるオンライン開催)にお いて研究報告を行った。また、代表者と分担者(3名)は、ポジショナリティ研究会の科研費報告書『「経験的概念としての「ポジショナリティ」の実証的研究」研究報告書』(18H00935)において執筆をおこなった。 2.面接聞き取り調査(質的調査)については、代表者と分担者で実施する予定であったが、新型コロナウイルスの感染状況等を鑑み、十分に行うこと ができなかった。研究計画では、主として沖縄の基地問題に関わる沖縄県内外の運動家、その情報を発信する主要アクターに対する聞き取り調査を行う予定であったが、県境を越えた移動を伴う沖縄県外調査については全く実施できていない。また代表者は沖縄県内において若干の聞き取りを行なったが、同様の理由で予備的な調査にとどまっている。 3.2021年度は質問紙を用いた定量調査を実施する予定であったが、調査対象地域における新型コロナウイルスの感染状況を鑑み、各選挙区における選挙人名簿からのサンプリング作業を翌年度(2022年度)に延期することとした。そのため引き続き、代表者、分担者全員で質問紙の構成と質問項目の精度を高めるための議論と作成作業を行い、対象となる選挙区の地域社会の特性を考慮した調査地点の選定作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献研究については、本研究におけるキー概念の整理およびこれらの諸概念を沖縄における基地問題に組み込む理論的な位置づけなど、概ね順調に進ん でいる。 2021年度に実施を予定していた定量調査については、やや遅れている。その理由として、調査対象地域としている沖縄県内において新型コロナウイルスの感染が再拡大したことを鑑み、各選挙区選挙人名簿からのサンプリング作業を翌年度(2022年度)に延期したことが挙げられる。そのため、代表者、分担者全員で引き続き、質問紙の構成と質問項目の精度を高めるための議論と作成作業を行い、対象となる選挙区の地域社会の特性を考慮した調査地点の選定作業を行った。 面接聞き取り調査(質的調査)については、代表者と分担者で実施する予定であったが、ほとんど実施することができなかった。研究計画において は、主として沖縄の基地問題に関わる沖縄県内外の運動家およびその情報を発信する主要アクターに対して聞き取りを行う予定であったが、新型コロナウイルス の感染再拡大等により調査実施主体と対象者の感染リスクを考慮し、2021年度の実施を断念せざるを得なかった。また、代表者は沖縄県内において若干の聞き取り調査を行なったが、予備的なものにとどまり、十分なものとはなっていない。 以上のように、文献研究は概ね順調であるが、定量調査と質的調査が遅れているため、研究計画全体を総合的に見ると「やや遅れている」 ものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
文献研究については、本研究のキーワードに関する文献探索を次の段階へ進める。とくに、本研究視角の哲学的な基礎となっているアラン・トゥレーヌの文献研究に着手する。また、上記キー概念と隣接する諸概念(「ポジショナリティ」「権力」「不和」等)に関わる文献や、沖縄以外の差別問題に関する文献研究も引き続き行い、差別構造研究の一般理論化を行う。さらに、沖縄の社会構造および基地問題に関わる文献研究も引き続き行う。 次に、2022年度に最も重点を置く、沖縄県在住者を対象とした質問紙調査(定量調査)については、5月中に質問紙を完成させ、9月にサンプリングを行い、9月後半以降に質問紙の送付・回収、データ入力と解析を行う。なお、新型コロナウイルスの感染拡大状況や各種選挙日程等により、定量調査のサンプリングや質問紙送付等のスケジュールに変更が生じる可能性がある。定量調査のデータ解析については、11月中旬から十分な時間をかけて行い、12月中には代表者、分担者によってデータの解釈と評価の議論を行う。2023年の1月には定量調査の結果等に関する報告書の構成と執筆分担等を編成し、2月から3月にかけて報告書の執筆を行う。報告書の印刷・製本は3月中に完了させる。 また、面接聞き取り調査(質的調査)については、新型コロナウイルスの感染状況を見ながら、適宜行っていく予定である。特に、夏期休暇期間の8月および定量調査に関する質問紙の回収期間(10月)に集中的に行う予定である。面接聞き取り調査については、これまでの予備的調査を参考にしつつ、定量調査の結果および仮説モデルとの相補的な効果を得るために質問項目を構造化し実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)2021年度に未使用額が生じた理由は、主として「旅費」によるものである。その理由は、国内における新型コロナウイルスの感染が再拡大し、面接聞き取り調査(質的調査)や共同研究者間の対面方式の打ち合わせ等を一切行うことができず、出張等の旅費が全額未使用となったためである。また、上記理由によ り、調査対象者に対する「謝金」や質的調査および定量調査に関するデータ入力の「人件費」にも未使用額が生じた。さらに、定量調査に関する「その他」(質問紙印刷代、送付代等)にも未使用額が生じている。 (使用計画)2022年度は、主として質問紙調査(定量調査)を実行する予定である。その場合、調査対象者選定作業(サンプリング)に伴う調査地域への旅費と人件費、データ入力に伴う人件費、そして 質問紙の印刷代・郵送代等(「その他」費目)に使用する予定である。また、国内の新型コロナウイルスの感染状況が落ち着きしだい、質的調査も実行することとし、共同研究者間の対面方式の打ち合わせも行っていきたい。その場合は、旅費や謝金等に使用する予定である。
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