研究課題/領域番号 |
20K02084
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
高橋 涼子 金沢大学, 人間科学系, 教授 (80262541)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 障害者 / 脱施設 / 家族 / 地域社会 / 排除 / 孤立 / 包摂 / 支援 |
研究実績の概要 |
日本の障害者政策における入所施設重視の歴史的経緯と、国連障害者権利条約の批准に関わる近年の政策変化について、障害当事者や家族のさまざまな社会運動が果たした役割やもたらした影響、運動団体間の関係から分析し、以下の知見を得た。 ①1960年代からの家族(親)の運動、1970年代からの重度障害者の運動、1980年代からの自立生活運動が重層的に展開され、対立したり協調したりしつつ今日まで障害者政策に影響を与えてきた。 ②1990年代には国際的な障害者政策の影響もあり、政策的に「脱施設化」が掲げられたものの、家族を障害のある人のケアの責任主体とする政策枠組みに決定的な変化がなく、依然として地域資源が不足している。 ③しかし、2010年代からの障害者権利条約の批准と、国連障害者権利委員会による批准国に対する実施状況審査に向けて、多様な障害当事者や家族の運動団体間に新たな協調の機運が醸成されてきた。 これらの分析をふまえ、2021年10月のThe 2nd congress of East Asian Sociological Association、2022年3月の日仏共同セミナー(主催:フランス国立社会科学高等研究院(EHESS)・東アジア文明研究センター(CRCAO))で発表を行った。そして、家族にケア責任を負わせることで入所施設からも家庭からも障害のある人の地域移行が進まないこと、施設入所者の地域移行に際しては十分な地域資源とともに家族支援も含めた支援計画が必要であることを、論文「家族からの排除/家族への排除―日本の障害者政策の課題―」(金沢大学人間科学系研究紀要14号)にまとめた。特に精神医療と精神障害のある人の社会的排除に関する課題については、2021年10月に「精神に障害のある人の福祉医療―国際的動向と運動の現状―」(医療・福祉問題研究会第141回研究例会)として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ状況ため、各国比較の実地調査は行えなかったが、2021年10月のThe 2nd congress of East Asian Sociological Associationではアジア各国の研究者と、2022年3月の日仏共同セミナーでは、日本とフランスの研究者と、障害者政策の比較に関する有益な研究交流を行うとともに、研究成果の発表を行うことができた。そうした成果を論文「家族からの排除/家族への排除―日本の障害者政策の課題―」にとりまとめ、多様な障害当事者や家族の運動団体間の協調と連帯の方向性について、検討を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年3月の日仏共同セミナーの各報告者の報告内容を論文集として出版する計画があり、これに参加する予定である。このセミナーにおいて、フランスの障害者政策と障害当事者および家族の状況と、家族によるケアに対する政策的な支援に関する情報を得られたので、国際比較の対象にフランスも加えることを検討している。また新型コロナの状況が徐々に回復していることから、当初の研究計画に沿った海外調査実施に向けた準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
引き続き新型コロナの状況により予定していた海外調査が実施できず、旅費および現地での通訳などの謝金として計画していた予算が執行できなかった。関連領域の書籍の積極的な入手や自動翻訳ソフトの更新を行うとともに、新型コロナ状況を注視しつつ海外渡航の制限が緩和された地域から順次、調査を行えるよう、連絡・調整を行う。
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