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2021 年度 実施状況報告書

消費社会論の再構築と倫理的消費の再定位:物質性の哲学の社会学的応用の試み

研究課題

研究課題/領域番号 20K02085
研究機関豊橋技術科学大学

研究代表者

畑山 要介  豊橋技術科学大学, 総合教育院, 准教授 (70706655)

研究分担者 橋本 努  北海道大学, 経済学研究院, 教授 (40281779)
丸山 千賀子  金城学院大学, 生活環境学部, 教授 (20324965)
根本 志保子  日本大学, 経済学部, 教授 (70385988)
伊藤 賢一  群馬大学, 社会情報学部, 教授 (80293497)
神野 由紀  関東学院大学, 人間共生学部, 教授 (80350560)
生垣 琴絵  日本大学, 法学部, 講師 (90646093)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード消費社会 / 倫理的消費 / 経済思想 / 消費者運動 / ハンドメイド / 持続可能性 / 無印良品 / 物質主義
研究実績の概要

本研究の目的は、物質性の哲学の展開を社会学に導入することで消費社会論を理論的に刷新し、記号理論とは異なる仕方で「モノの倫理的消費」を再評価することである。本研究プロジェクトでは「消費社会論研究会」を組織して定期的な研究会を開催するとともに、担当するサブテーマごとに原稿執筆を進めた。今年度は、研究代表者・研究分担者各自が前年度の研究会におけるディスカッションをもとに、それぞれの担当サブテーマの考察を展開した。サブテーマを以下の4つのカテゴリに区分し、それぞれの中で具体的な検討をおこなった。
(1)消費理論の最前線:ケイト・ソパーやダニエル・ミラーの理論的研究
(2)家庭を超えて:プロシューマ―の登場や消費者運動の展開の研究
(3)環境への配慮:産消提携やプラスチック製品使用の研究
(4)顕示しない消費の台頭:無印良品やミニマリズムに関する研究
本年度7月には、上記の成果を『ロスト欲望社会―消費社会の文化と倫理はどこに向かうのか』(橋本努編, 勁草書房)にとりまとめ出版した。9月には経済社会学会においてラウンド・テーブル「ロスト近代の消費文化:道徳と倫理・無印良品・ミニマリズム」を設置して本プロジェクトの成果を発表し、学会において専門的な議論を深めた。さらに3月には『ロスト欲望社会』の合評会を開催し、哲学、人類学、経営学を専門とする外部研究者3名をゲストとして招聘してサブテーマごとのより深い検討をおこなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は当初の予定通り『ロスト欲望社会』を出版するなど、昨年度の集中的な研究会開催をもとにした研究成果の公表が中心となった。本書は学会や合評会、さらには新聞紙書評を通じていくつもの反響があり、社会学や経済学に留まらず、哲学、人類学、経営学など多様な分野を横断した様々な研究者との議論を通じて、本プロジェクトのテーマが一層促進されることになった。こうした分野横断性が本プロジェクトの特色でもあり、オープンな形式で合評会を開催して自らの分野とは異なる外部研究者を積極的に招く試みが順調に成功したと言える。また、代表者・分担者のサブテーマごとの研究発表も順調に進行しており、多くの学会や雑誌で本プロジェクトに関する成果が報告された。

今後の研究の推進方策

本プロジェクトでは、『ロスト欲望社会』で発表した内容をさらに進展させるとともに、物質性やものの実在性をめぐる哲学を通じて消費社会論そのものを理論的に発展させていくことを狙っている。M.ガブリエルの「新しい実在論」やB.ラトゥールの「アクター・ネットワーク・セオリー」などについて、人間とモノとの関係を考察する新しい視覚として検討を進めている。こうした理論研究の成果を消費研究に活かしていく方途について、議論を重ねていく予定である。さらに、実証的な研究としては、ハンドメイドとDIYをめぐる関係について、さらには水の消費に関する研究について、次年度に研究会内で検討を進めることを予定している。コロナの拡大など様々な事態が想定されるが、既にオンラインでの研究会体制が整っており、研究計画は予定通り進行することが十分に予想される。また、次年度は対面と遠隔を組み合わせたハイブリッド型の研究会を開催することを計画しており、そのための機材購入など環境整備もおこなっていく。

次年度使用額が生じた理由

本年度は、新型コロナウィルス感染症の影響で対面での学会や研究会の開催ができない状況となり、当初予定していた旅費が使用できない状態にあった。本年度は対面にて研究会や学会が開催される予定であり、翌年度分は当初の計画通りに使用する。本年度に生じた次年度使用額については、対面と遠隔を組み合わせたハイブリッド型の会議システムの導入や、研究過程で新たに必要が生じた図書資料の購入など、プロジェクトの遂行を円滑にするための環境整備に充てていく。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うちオープンアクセス 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 図書 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 社会的ミッションをもったコーヒーロースターーーオレゴン州ポートランドの事例から2022

    • 著者名/発表者名
      畑山要介, 寺島拓幸, 藤岡真之, 野尻洋平, 畑山直子
    • 雑誌名

      雲雀野

      巻: 44 ページ: 33-51

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] マーケティング史からみた日本の初期百貨店2022

    • 著者名/発表者名
      神野由紀
    • 雑誌名

      マーケティング史研究

      巻: 1 ページ: 96-104

  • [雑誌論文] ウェルビーイングとナッジ政策――自律のオプション化について2021

    • 著者名/発表者名
      橋本努
    • 雑誌名

      公衆衛生

      巻: 85 ページ: 831-835

  • [雑誌論文] 一樂照雄の社会経済思想と日本の有機農産物「産消提携」運動2021

    • 著者名/発表者名
      根本志保子
    • 雑誌名

      経済学史研究

      巻: 63 ページ: 1-22

    • 査読あり
  • [学会発表] 日本とフランスのあいだのリベラリズムの対話2022

    • 著者名/発表者名
      橋本努
    • 学会等名
      Conversation sur le liberalisme entre France et Japon
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 第1部 基調鼎談「2030年 日本社会のアジェンダ」2022

    • 著者名/発表者名
      嵯峨生馬, 坂口 緑, 橋本努
    • 学会等名
      ソーシャルアクションタンク シンポジウム
  • [学会発表] 消費と労働の脱成長2021

    • 著者名/発表者名
      畑山要介
    • 学会等名
      日本社会学会
  • [学会発表] フェアトレードの展開と倫理的市場の形成―社会・環境的配慮の市場化をめぐる社会学2021

    • 著者名/発表者名
      畑山要介
    • 学会等名
      経済社会研究フォーラム
    • 招待講演
  • [学会発表] 【ラウンドテーブル】ロスト近代の消費文化:道徳と倫理・無印良品・ミニマリズム2021

    • 著者名/発表者名
      畑山要介, 小田和正, 鈴木康治, 橋本努
    • 学会等名
      経済社会学会
  • [学会発表] ミニマリズム:新しい消費の思想とは2021

    • 著者名/発表者名
      橋本努
    • 学会等名
      シノドス・トークラウンジ
  • [学会発表] 新しいリベラルとはだれか2021

    • 著者名/発表者名
      橋本努
    • 学会等名
      Lunch Seminar on Japanese Economy and Society, Institut francais de recherche sur le Japon a la Maison franco-japonaise
    • 国際学会
  • [学会発表] 「社会意識の分断」という観点から見た現代日本の政治意識の構造2021

    • 著者名/発表者名
      金澤悠介, 橋本努
    • 学会等名
      日本社会学会
  • [学会発表] ロスト欲望社会~エコ・ミニマリズムのすすめ2021

    • 著者名/発表者名
      橋本努
    • 学会等名
      第27回日本EVフェスティバル
    • 招待講演
  • [学会発表] ロスト欲望社会と消費ミニマリズム2021

    • 著者名/発表者名
      橋本努
    • 学会等名
      NPO法人「環境文明21」全国交流大会
  • [学会発表] 岡田米雄の社会経済思想と1970年代の産消提携運動-「消費者と農民の自給農場」構想と自然・人間疎外-2021

    • 著者名/発表者名
      根本志保子
    • 学会等名
      経済学史学会
  • [学会発表] 岡田米雄の疎外論と消費者自給農場 -産消提携事業モデルの環境経済思想―2021

    • 著者名/発表者名
      根本志保子
    • 学会等名
      日本有機農業学会大会
  • [学会発表] 食と環境の提携運動への参加動機と消費者倫理 日本とオランダの消費者4団体のインタビューデータから2021

    • 著者名/発表者名
      根本志保子
    • 学会等名
      日本有機農業学会大会
  • [図書] ロスト欲望社会2021

    • 著者名/発表者名
      橋本努編
    • 総ページ数
      272
    • 出版者
      勁草書房
    • ISBN
      9784326603381
  • [図書] 消費ミニマリズムの倫理と脱資本主義の精神2021

    • 著者名/発表者名
      橋本努
    • 総ページ数
      368
    • 出版者
      筑摩書房
    • ISBN
      4480017313
  • [図書] 大正史講義【文化篇】(神野由紀「百貨店と消費文化の展開」)2021

    • 著者名/発表者名
      筒井清忠編
    • 総ページ数
      419-434
    • 出版者
      筑摩書房
    • ISBN
      9784480074232
  • [備考] ロスト欲望社会

    • URL

      https://sites.google.com/view/hashimoto-tsutomu/research/books/lost-desire-society?authuser=0

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公開日: 2022-12-28  

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