本研究課題の前にも2度の助成をうけ、その成果を2021年度は単著としてまとめた。『在日朝鮮人を生きるー<祖国><民族>そして日本社会の眼差しの中で』(2022年3月 三一書房)という本である。 2022年度は、その単著をもとに、2022年8月、2023年2月に合評会を開催した。特に2月の合評会は朝鮮大学校でその教員たちと行い、朝鮮学校における<祖国>の意味について、議論をすることができた。さらに、2回の合評会を通じて、これまでの研究の到達点、そして今後の課題が明らかになった。課題については、本課題で追究していきたいと考えている。 さらに、2022年度もコロナの感染が収まらず、なかなか本格的な調査には至らなかった。朝鮮学校の行事に参加し、その卒業生へのインタビュー調査依頼を行いたいと考えていたが、その行事、すべてに、制限がかかったからである。それでも、これまで形成しているラポール維持のために、予備調査的な調査として、朝鮮学校の卒業生、しかも、その多くは、今でも深いつながりを学校ともっている人たちに限るが、東京と京都、大阪で行ってきた。 もうひとつ、朝鮮学校の卒業生にとっての<祖国>という課題を考えるために、いわゆる「帰国者」を家族に持つ人たちにインタビューを行い、その家族にとっての帰国運動、帰国者を親族にもつということ、さらには、祖国=朝鮮民主主義人民共和国に対する思いなどをききとっている。 また、これまでの研究を「北朝鮮言説と朝鮮学校ー朝鮮高校無償化裁判を通じて」(東海社会学会年報 14号)として、まとめた。
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