最終年度の2023年度になって,ようやく,コロナによる制限がほぼなくなり,ようやく自由な調査や対面での成果報告会が可能となった。2023年度も継続して,朝鮮学校の卒業生たちへのインタビュー調査を続け,かつ,かれらにとっての<祖国>とは何か,そして,その<祖国>をめぐる愛着,葛藤など複雑なものを読み取る努力を続けた。 社会的還元のひとつとしては,韓国で13年間スパイとして囚われ,死刑判決までうけた康宗憲氏(2015年再審無罪)への公開インタビュー(インタビュアーはジャーナリストの中村一成氏)を愛知県立大学にて12月6日に実施。多くの人の参加を得て,ともに<祖国>とは何か,<祖国を創る>ということの意味を考えた。当日の成果は,現在,編集中で,後日,本学の紀要に掲載するつもりである。 また,共同研究を行った科研とも共同して,2023年10月20日に韓国のソウル大学人類学科BK研究団とともに共同セミナーを行い,コメンテーターをつとめた。2024年3月には川崎のふれあい館や川崎の在日朝鮮人集住地区をフィールドワークして,次の研究へのてがかりを得た。4年間,コロナによる国境往来が不便になり,本来,実施しようとしていた平壌への在日朝鮮人たちとの同行調査が実施できず,その意味においては,本研究の十分な成果を出すことができなったことが残念である。この点については,次の研究でフォローをしつつ考察を深めていきたい。
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