研究課題/領域番号 |
20K02092
|
研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
堀畑 まなみ 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 教授 (40348488)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 産業廃棄物 / 不法投棄 / 環境社会学 / 産業廃棄物特別措置法 |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績は、環境犯罪における有害化学物質が含まれる不法投棄についての文献研究と、香川県豊島不法投棄事件についての環境社会学的な振り返りである。環境法の研究会にて、過去の文献や資料とこれまでの現地調査経験から、産業廃棄物特別措置法で対応をすることになるまで経緯を被害構造論の視点から報告をした。香川県豊島不法投棄事件は環境犯罪であるため、環境犯罪や環境正義に関する文献の研究が必要になり、実施した。 本来であれば現地での調査研究が中心で研究を実施する予定であった。しかし、新型コロナウィルス禍で過疎地域の高齢者へのヒアリングはもちろん、移動さえもできる状況ではなかったため、文献による調査研究に本年度は限定をせざるを得なかった。 この研究の目的は、①産業廃棄物特別措置法にかかる事例について環境社会学的分析枠組みである被害構造論の視点から分析をすること、②過疎化によって、かつては現地住民による社会問題化ができた産廃の処理場・処分場問題が社会問題にならなくなったことで、社会学の直接関与の限界と間接関与の可能性を探ることである。目的①は、過去に社会問題化したものであるため文献があるために可能であった。産業廃棄物問題は20世紀の終わりに、香川県豊島不法投棄事件、青森・岩手県境不法投棄事件、三重県四日市大矢知不法投棄事件など、大規模な不法投棄・不適正処理という環境犯罪として社会問題化した。不法投棄・不適正処理をどうするのか、事後処理の研究ではあるが、特措法につながったことで、環境正義の視点を組み入れることができる。次年度からは、目的②を新型コロナウィルス流行の状況をみながら、実施していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
進捗状況は、2020年度を文献等調査と現地調査で合わせて100%とすれば、現地調査を実施できず、文献等調査のみであったため50%程度になる。そのため次年度からは2020年度にできなかった分を取り戻す必要がある。 2020年度は、夏と冬に香川県豊島不法投棄事件、秋に宮城県村田町不法投棄事件、冬に青森・岩手県境不法投棄事件、秋田県能代産廃不法投棄事件のヒアリングが予定されていたが、授業期間中はコロナ対応で急きょ忙しくなった学務で調査は不可能となり、かつ研究ができる頃には、コロナで移動が制限されていた。また、調査では、住民へのヒアリングを予定していたが、調査対象が高齢者であるため不可能となった。特に、香川県豊島不法投棄事件の調査は、島という特性上、外部から誰に会いに来たのかがわかりやすい。本人が罹患していなくても、荷物等に新型コロナウィルスが付着している可能性がある外部の人が出入りすることは、現地の人にとって大きな迷惑になるため、できなかった。同様に、宮城県村田町不法投棄事件の調査も、現地の住民は普段会う人が限られているため、外部者との交流は迷惑になると考えられるために不可能であった。 現地調査を予定していた事例については、いずれも、2023年3月末で期限が切れる産廃特措法にかかるものなので、実施主体である広域自治体のホームページには進捗状況など情報が開示されている。こちらからの情報収集と、新聞記事検索、論文などから、事件の経緯と特措法対応の進捗状況についての事前調査を実施した。 理論や概念などの文献等調査については、特措法対応事例であるため環境法と、専門である環境社会学に焦点を絞って実施した。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度については、文献調査は予定していた通りに実施ができるが、新型コロナウィルス流行の状況を見ながらのフレキシブルに対応しての現地調査を実施することになる。 昨年度予定をしていて実施できなかった香川県豊島不法投棄事件調査、宮城県村田町不法投棄事件調査、秋田県能代町不法投棄事件調査については必ず実施をしたいと考えている。香川県豊島不法投棄事件調査は、1996年から毎年2回実施していたが、2020年度は初めて1度も実施ができなかった。豊島では、ヒアリングをしてきた住民が高齢になっているため、新型コロナウィルスに感染した場合に重症化しやすい高齢者に対して、どのようにヒアリングを実施するが課題となる。一般的にはオンラインと思うかもしれないが、調査対象にはウェブ環境がない方もいらっしゃり、携帯電話のみのヒアリングでは先方に迷惑がかかる。そのため、ワクチン接種後ではないと、現地住民ヒアリングは不可能であると考えている。 ヒアリング調査ができない時の代替措置としては、現地視察が中心となる。現地視察に限るのであれば調査はかなり可能である。例えば香川県豊島においては不法投棄現場を見られるように、以前に整備がなされている。しかしながら、しばらく放置されていたことで足場などがきちんとしていないとして2020年2月現在では立入禁止となっていた。現地整備が終わっていたら視察が可能になる。 また、青森・岩手県境不法投棄事件については、この件を取材している新聞記者の方へのヒアリングが可能であるため、新型コロナウィルス流行の状況次第では、青森・岩手県境不法投棄事件の調査を入れて、他の調査を実施しないというフレキシブルな対応をしていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた理由は、新型コロナウィルス流行の影響で、移動やヒアリング調査対象者に会えなかったからである。2020年2月に徐々に国内で流行し始めた新型コロナウィルスによって、テレワークが推進され、卒業式や入学式などの式典は中止となり、4月以降の大学の授業はオンラインで実施されることになった。これに伴い、オンライン授業の準備に相当の時間がとられるようなり、教育活動に対しての時間配分が必然的に多くなった。また、現地での視察や、住民、関係者へのヒアリングから事実を浮かび上がらせることが、本研究の要であるため、現地調査ができないことは研究遂行に大きな影響を与えている。そのため使用計画も大幅に変更せざるを得ない。当初の予定では、香川県豊島不法投棄調査については申請者だけでなく、1996年から現在まで現地調査をともにしている研究者に依頼し、調査協力者として参加してもらうものであったが、宮城県村田町不法投棄事件及び青森・岩手県境不法投棄事件についても、環境社会学や環境法学の研究者にご協力いただき、必要な助言を得る。具体的には、香川県豊島調査を3名で2回、宮城県村田町調査を3名で1回、青森・岩手県境不法投棄事件調査を5名で1回である。解決過程論に位置づけるため、政策の方向性には環境正義の考え方が必要になる。調査協力者は産廃問題や環境正義、環境法の研究者を予定している。
|