研究課題/領域番号 |
20K02094
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
伊藤 るり 津田塾大学, 総合政策学部, 教授 (80184703)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 家事労働者 / フィリピン / フランス / 移住労働 / ライフストーリー |
研究実績の概要 |
本研究では、パリで働くフィリピン人家事労働者の就労歴、移動歴、ならびに生活世界について、現地調査により把握することを目的としていたが、2年目も新型コロナウイルスの感染が日仏両国で終息せず、出入国が困難、もしくは安全に現地調査を行うことがむずかしかったため、以下の点などに注力した。 (1)フランス国立経済統計研究所(INSEE)がこれまで明らかにしてこなかった在仏フィリピン人人口、及びフィリピン系移民に関する統計が一部公表されたことを踏まえ、フィリピン政府側による在仏フィリピン人に関する推計と比較検討して、在仏フィリピン人コミュニティの人口動態的推移について一定の認識を得た。2007年には1万人程度だったコミュニティが10年後には18,000人台と規模を確実に拡大し、定住化の傾向が裏づけられた。 (2)全国個人家庭雇用主連盟(FEPEM)が調査会社に委託して2020年6月から7月に行った調査結果をもとに、コロナ禍が家庭雇用に与えた影響を一定程度捉えることができた。それによれば、1回目のロックダウン(2020年3月から5月)で家庭雇用の賃金総額は-13.8%の減少となったが、部分的失業制度等の利用によって9割の雇用主が全面的、もしくは部分的に雇用を維持できた。また、ロックダウン解除後に雇用を再開できた労働者は94%に及んだが、ベビーシッターに関しては解雇となった者が多かった。ただし、本研究フィリピン人家事労働者については、無申告のインフォーマルな労働である場合が多いことから、この調査から実態をつかむことは困難である。この点はやはり現地調査を必要とする。 (3)過去の断続的調査で得てデータの整理と課題の検討を行い、一部の調査協力者とはソーシャル・メディアを通じてコンタクトの維持に努めた。 (4)段階的移住、トランスナショナルな階級構造に関する先行研究の整理を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染継続により、初年度に引き続き、2年目のパリ現地調査が先送りとなった。この間、調査の軌道を修正し、統計や入手可能な関連の調査結果などをもとに、コロナ禍が家庭雇用に与えた影響を把握するなどしているが、現地調査が実施できないため、進捗状況を「やや遅れている」としている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度も新型コロナウイルスの感染状況の影響を受けるが、フランスは現状ではワクチンの追加接種などを条件として渡航が可能となり、日本についても出入国規制緩和が見られるので、7月に現地調査を試みる予定である。これによって、これまでの研究進捗の遅れを少しでも挽回したい。 また引き続き、次の2点に関する作業を進める。 (1)過去の断続的調査で得てきたデータの整理検討。 (2)新型コロナウイルス感染がパリのフィリピン人家事労働者のネットワーク、就労機会、生活基盤に与えた影響の把握。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、パリでの現地調査を次年度に延期したため。 次年度使用額については、安全に現地調査が実施できる条件が整いしだい、旅費、宿泊費、調査協力者謝礼、通訳謝礼などに充てる。このほか、国際移民とジェンダー関連図書文献の購入などに充てる予定。
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