研究課題/領域番号 |
20K02097
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
樽本 英樹 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (50271705)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 国際移民 / 超多様性 / 市民権 |
研究実績の概要 |
当該年度については、以下の2つのテーマについて研究を行った。 第1に、研究における立場性の問題である。研究者が社会内における立場を問われる可能性は常に存在し、国際社会学においても逃れることができない。西ヨーロッパ諸国で問題化しているイスラム過激主義に即すと、過激主義がテロリズムへと展開していく過程を「記述」している段階では、抵抗と差別の言説と理論の言説の距離化には成功している感覚が得られやすい。しかし、過激主義を逸脱行動の一種と捉え、なぜ生じるのかを「説明」し始めると、その理論前提や研究態度など立場性が問題視され、理論の言説は抵抗と差別の言説に飲み込まれやすくなる。このような言説の拘束は、立場性の問題化を従属変数とし、「対象と研究者のカテゴリー差異」や「イシュー規範性」などを独立変数とする関数で理論化できる可能性がある。 第2に、市民権政策の展開の理論的研究である。 近年、社会的イノベーションへの注目が高まっている。イノベーション概念は J. シュンペーターによってある種の経済発展を指すため導入され、他の領域に応用されるようになった。そのうちのひとつである社会的イノベーションは、その必須要素として (a) 人間の進歩・発展に役立つ諸行為または施策、(b) 質的な新しさ、(c) 行為実施・政策主体主導、(d) 「新結合」を備えるべきである。社会的イノベーション概念を通すと、移民市民権政策は次のように解釈できる。第2次世界大戦後、リベラル化したと言われてきた移民市民権政策は、2000年代以後「獲得市民権」へと変化していった。獲得市民権に、質的な新しさ、政策主体主導、「新結合」は見られたものの、「人間の発展」の要素は希薄だった。すなわち変化した移民市民権政策は、「人間の発展なき社会的イノベーション」であると結論づけられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国際社会学的研究の前提条件である研究者の立場性を考察できたことは、今後の研究推進にとって大きな成果である。なかでも、超多様性を構成しているイスラム過激主義に対する研究態度を反省することができたことは、今後の研究の基礎をつくることになった。また、超多様性の中で揺れ動いている市民権政策の理論的枠組みとして、社会的イノベーションを検討できたことも、特筆できる。 しかし、新型コロナパンデミックがいまだ終息しない中、海外調査の道は閉ざされ、国際学会についてもオンラインのみとなり、十全な進捗状況とは言い切れない。不十分であった部分は、次年度に持ち越すことになった。
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今後の研究の推進方策 |
まずは新型コロナパンデミックの動向を見極める必要がある。海外渡航が可能になれば、海外調査および海外における国際学会発表を行い、研究の実証的部分と成果公表の部分を充実させることにする。海外渡航が不自由である場合は、実証的部分は国内で入手できる文献やデータを活用する方策をとらなくてはならない。また、国際学会発表は時差があるためかなり身体てきにはきついものの、オンライン開催のものに参加を継続することにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナパンデミックの影響により、海外調査および現地における国際学会発表ができなかったため、次年度使用額が生じた。次年度においては、パンデミックが落ち着き海外渡航の不自由が解かれれば、旅費などとして使用する。もし落ち着きをみせないときには、国内で取得可能な文献やデータなどの支出に用いる方策を考える。
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