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2020 年度 実施状況報告書

陶磁器産地の技術革新メカニズムに関する国際的研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K02099
研究機関大同大学

研究代表者

松木 孝文  大同大学, 教養部, 准教授 (90589269)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード陶磁器産業 / ファインセラミック産業 / 中国研究 / イノベーション
研究実績の概要

本研究の目的は、陶磁器産地における技術革新メカニズムを、家族・地域関係の役割に焦点を当てつつ明らかにする事である。調査対象地域は、日本(特に東海地域)および中国(広東省潮州市)の陶磁器産地である。本研究の目的を達成するため、2020年度は主として関係資料の探索・整理と、それに照らして過去の調査データの再分析を行った。これにより得られた知見は以下のとおりである。
第一の知見は、東海地域における技術革新に家族関係が強く影響している事である。先行の理論においては、イノベーションにはいわゆる「弱い紐帯」が重要であるという事が強調されている。実際、東海地域においても直接的な契機となった要因は家族関係ではなく、取引先企業や大学との関係のように、より「弱い紐帯」である場合が多い。但し企業個別のエピソードの中では、技術革新の際に、家族がコストやリスクを伴う意思決定に多大な影響を与えていた。大学や取引先企業との提携は多くの場合、こうした意思決定を受けた「結果」である。例えば先代から今と違う事をするように勧められた後継者が、大学や研究所で学んで会社を一新し、一方で先代は必要なリソースを気前良く提供しつつ、社内外の軋轢を抑え込む、という流れは東海地域の陶磁器産業に見られる典型的なストーリーである。目的・手段の両方に家族関係が大きな影響を与えている。
第二の知見は、広東省潮州市における事例(焼成技術の革新)にも、東海地域の事例と同様に家族の影響が強く顕れている事である。但し、潮州市の陶磁器関連企業においては、家族経営が自明と認識されているケースが多く、近隣に親族が居住して別会社を経営している場合も多いため、家族・地域・企業の境界を峻別することは、東海地域の事例よりも遥かに困難である。潮州市における焼成技術の地域内への普及については、こうした「境界の薄さ」が重要な役割を果たしたと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

先行研究やこれまでの調査の分析により、当初予定通り理論的な整理は進んだ。但し、COVID-19の影響により移動が制限されるとともに、現地大学および企業が調査に対して消極的になっており、実地調査の目途が立たない状況である。国内調査も同様の状態にあるため、文献や統計資料の探索で代替可能なデータを模索することとなった。

今後の研究の推進方策

2020年度に引き続き、2021年5月現在もCOVID-19の影響により調査が困難である。以降もこの状況が継続する可能性がある。中国現地の調査に関しては調査対象地にある韓山師範学院のスタッフと連絡を取りつつ、引き続き代替手段も含めた方法を検討するとともに、CNKI等の利用により、文献・統計などの分析を継続する。国内(東海地域)の地場産地の調査に関しても同様に困難が予想されるが、既に収集した資料やデータの整理を行うとともに、新規の資料発掘を進める。既に、東海地域の公共図書館及び大学に所蔵されている関連資料のリストを概ね完成させたため、以降は優先順位を付けつつ必要なデータの入手に努めたい。以上、当初研究計画を可能な範囲で柔軟に運用することを心掛け、調査計画に生じる遅滞を最小限に留め、かつ、仮に実施可能となった際の実地調査をより的確・効率的に行えるよう準備を進めたい。

次年度使用額が生じた理由

2020年度は国内外の実地調査を計画していたが、COVID-19の影響で実施が困難となったため使用予定額を繰り越した。今後実施が可能な場合、その費用に充当するが、最終年度まで実施困難の見通しとなった場合、可能な範囲での質問紙調査の費用に充当するか、(それも不可能な場合)文献の入手と分析用のアルバイト謝金のために充当し、研究目的の達成を確実なものとしたい。

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公開日: 2021-12-27  

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