研究課題/領域番号 |
20K02100
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
川島 理恵 京都産業大学, 国際関係学部, 准教授 (00706822)
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研究分担者 |
前田 泰樹 立教大学, 社会学部, 教授 (00338740)
近藤 朱音 独立行政法人国立病院機構四国こどもとおとなの医療センター(臨床研究部(成育)、臨床研究部(循環器)), 臨床研究部, 医長 (00384884)
阿部 哲也 関西医科大学, 医学部, 准教授 (20411506)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヘルス・コミュニケーション / 会話分析 / 意思決定過程 / 医療社会学 |
研究実績の概要 |
本年度は特に遺伝カウンセリングにおけるデータ収集とプライマリ・ケアデータの分析を集中的に行った. まず遺伝カウンセリングの現場では、協力者の病院において合計28件の出生前診断及び小児遺伝のカウンセリング場面の撮影を行った.これらのデータは随時トランスクリプションを作成中である.内4件は完成しており、分析を進めている.オンライン・対面の2回のデータ検討会を開催し、分析内容の議論を進めている.現在は、妊娠初期の超音波により異常の見つかったケースに焦点を当て、出生前診断のための検査を進める会話の構造について分析を進めている.NTPTというスクリーニング検査という極めて複雑な内容をいかに患者にとってわかりやすく説明するか.それだけではなく、異常が見つかった不安な感情をいかに支えつつも、妊娠を断念するような意思決定の可能性について話し合うのか.こうした複雑な課題の分析を行った. 次にプライマリ・ケアデータについては、特に意思決定過程において感情がどのように扱われているかに着目して分析を行った.どのような場面において感情表現が患者からなされ,それに対して医師が実際にどのように対応すべきかという点に関しては,十分な議論が進んでいない.会話分析を用いて,意思決定場面においてどのような連鎖上の位置で,特に患者のネガティブな感情があらわになり,医師がどのような対応を行っているのかを明らかにした.今後さらに意思決定過程における感情の共有が果たす役割について議論を深めたい.この内容は人工知能学会研究会資料言語・音声理解と対話処理研究会 SIG-SLUD-094-19 p.107-112に掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ収集の点では,コロナ禍の影響で病院でのデータ収集に若干の遅れが生じている.今年度前半は,コロナの感染状況が思わしくなく,病院に入ることもできない状態であった.特に遺伝外来におけるデータ収集は厳しかったが,後半に感染状況の改善と事前にPCR検査を受けるなど様々な感染対策を講じて,データ収集を行うことができた.しかしながら,データ処理の点では若干の遅れが生じている.トランスクリプトを学生アルバイトによって作業しているが,就活など様々な事情により予定通り進めることが難しい場合もあった.ただ分析に特に必要なケースを対象として優先的にトランスクリプトを進めるなどして対応している.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,遺伝外来やプライマリ・ケアでの収録を続けつつ,データ分析をさらに2つの点において深化する.まずそれぞれのデータの特徴を横断的に分析し,意思決定過程の特徴について分析を進める.特に医師の提案に対して患者が同意しない場合の対応について検討を行う.特に医師が提案の度合いを調整したり,修正するケースについて分析を進める.次に意思決定過程において不確定な要素がある場合,医師がその不確実性をいかに定式化し,患者との話し合いを進めるかを分析する.特に遺伝外来において,染色体や遺伝子など複雑な内容とともに不確実な部分について言及する際の工夫について明らかにする.これは本研究では非常に重要な部分である.不確実性に伴う医師の行う工夫を特定することで,今後の医学教育の内容充実を図りたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染状況により年度前半に行うはずの調査出張を行うことができなかった.来年度に調査を計画し,執行予定である.
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