研究課題/領域番号 |
20K02103
|
研究機関 | 相愛大学 |
研究代表者 |
藤谷 忠昭 相愛大学, 人文学部, 教授 (30368378)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 合意 / 記憶 / 自衛隊 / 国境 / 地域 / 南西諸島 |
研究実績の概要 |
引き続き調査対象の市町村史などを読み進めるとともに、記憶論の観点から、分析視角の精緻化に努めた。現地調査では、奄美大島と、比較調査のために北海道を訪れ、情報収集を行った。 奄美大島では、奄美市議会議員、奄美市防衛協会会長などから、自衛隊駐屯地の配備について現状を伺うとともに、駐屯地が所在する地区では、奄美市大熊町内会長、瀬戸内町節子区区長から、地域社会のその後の推移について事情を伺った。また、自治体、図書館等で情報を収集した。 北海道では、いくつかの地域の自衛隊施設を視察するとともに、根室では北方領土と自衛隊との関係について、北見では美幌駐屯地防衛協会と屯田村などについて聞き取りを行うとともに、各関係機関での情報収集に努めた。また、札幌では、北方領土問題対策協議会、北海道アイヌ協会を訪問し、それぞれの現状を伺い、今後の研究の方向を展望した。 また、これまでの研究の成果で得られた知見を基に、論文「住民投票における自由記述の可能性─与那国町への自衛隊配備を巡って」『相愛大学論集39号』を執筆した。その中で、陸上自衛隊駐屯地の配備を巡って行われた住民投票に焦点をあて、配備の前後の地域社会の動きを記述しつつ、合意形成における住民投票の意義と課題を明らかにし、住民の意思を地域自治へ反映する方法を検討した。 第95回日本社会学会では、「南西諸島への自衛隊配備と地元負担─軍用地の存在と地域社会」というテーマで、与那国と奄美大島との状況を比較しつつ、新たに陸上自衛隊駐屯地が配備された地域自治組織に、どのような負担があるのかを論じ、自衛隊施設の敷設による、地域社会の変動の様相について分析した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献研究やこれまでの調査の整理については、予定通り進展したが、新型コロナウイルスの流行のため、予定していた現地調査を十分に実施することができなかった。とりわけ、自治体が来島について自粛を求める沖縄離島地域への訪問は自重した。訪問が可能であった奄美大島では、感染対策を十分に施し、慎重に調査を進めた。また、根室、北見への訪問でも、紹介を頂戴した一部の方々を除き、市役所の担当部局でのヒアリング、現地視察や、図書館等での地域についての情報収集に努めるにとどまった。 もっとも、そうした制約はありつつ、具体的には研究実践の概要で述べたように、本研究にとって有益な成果を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究プロジェクト最終年として、今回の研究成果の整理と、情報発信に努めたい。 まず、6月に世界社会学会議メルボルン大会にて、研究成果の報告を行う。沖縄での調査を事例に、軍事施設と地域社会との関係について、住民の記憶の観点から分析し、地域社会におけるコミュニティ活動が軍事施設の存在によって阻害されること、また、政府に対する地域住民の働きかけが人々のコミュニティーへの意思であることなどを報告する。 さらに、これまで研究の成果の一部を、現在、作成進行中の共著として出版する予定である。その中で、自衛隊施設の敷設による地域自治組織への影響を、与那国と奄美大島とを比較しながら論じ、離島において軍事施設が存在する意味を社会に発信したい。併せて、今回の期間の成果も活かし、新たな論文の作成に着手する予定である。 新型コロナウイルスの影響で、当初の計画とは異なったプロジェクトの進行となったが、予定したものとは異なった成果を得ることもできた。こうした不測事態による結果を十分に活かしつつ、新たな研究プロジェクトを企画し、本期間で達成しえなかったことをも補いつつ、より充実した研究の推進、成果の達成を目指していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行で、全体的に計画が遅れた。また、研究成果を報告予定であった世界社会学会議メルボルン大会の開催が1年遅れ、本年度、報告することにした。
|