研究課題/領域番号 |
20K02105
|
研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
田宮 遊子 神戸学院大学, 経済学部, 教授 (90411868)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 母子世帯 / 社会政策 / 生活時間 / 国際比較 |
研究実績の概要 |
本研究では、まず、母子世帯を分析の軸におき、育児を含む無償労働に従事することが時間貧困と所得貧困にどのように関係するかを分析した。12か国(日本、イギリス、ベルギー、ハンガリー、ポーランド、ドイツ、フィンランド、フランス、ギリシャ、オーストリア、イタリア、スペイン)について、時間貧困と所得貧困の関係から、労働中心型貧困、労働中心型非貧困、両立型貧困、両立型非貧困の4類型が見いだされた。それぞれの類型と社会政策の関係について、労働中心型貧困の国々では所得保障と保育サービスの不足との関連性、労働中心型でもとくに有償労働中心型貧困の国々では所得保障の低さと子育て中の女性の低賃金との関連性、両立型貧困の国々では保育サービスの不足との関連性、両立型非貧困の国々では社会政策が母子世帯の相対的な不利を埋めている可能性が示唆された。また、日本の母子世帯と社会政策との関係について、とくに所得貧困から免れるための所得保障制度について、近似の制度改正を含めてその政策過程について分析した。マリーデリーによる 個人化と家族化の枠組から検討すると、離別母子世帯に対しては就労自立を強調する個人化の方向性での制度改革が行われる一方で、死別母子世帯に対する遺族年金は1985年に整備された体系のまま家族化の特徴を強く有する制度が維持されていた。ただし、児童扶養手当の近似の制度改正を踏まえると、子どもの貧困を克服するための制度として再配置された側面が見いだされ、個人化の方向性をもつ展開と捉えることが可能である点を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、労働、ケア、貧困の関係について国際比較分析、並びに、日本に関して近年の制度改正を踏まえた社会政策の分析をすすめることで新たな知見の発見があり、研究成果をまとめることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、母子世帯の時間貧困と経済的貧困の原因であり、また、その帰結である社会政策の役割について、国際比較の観点からより詳細な分析を行う。今年度の研究で明らかになった国家間の共通性と相違性が、各国の社会政策とどのように関連しているのかを検証する。シングルマザーが所得貧困に陥らず、労働とケアを両立でき、生活時間の均衡を保った生活を獲得するために必要な社会政策の役割と限界について明らかにしたうえで、母子世帯の観点からのジェンダー平等を実現する社会政策に関する政策インプリケーションを整理し、日本における制度改正の議論に貢献し得る知見を提示することを目指す。研究代表者がデータ分析、結果の解釈等の研究全体を主導し、研究協力者による分析の支援をうけて研究成果をまとめる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた国際学会での報告がスケジュール上困難となったため、次年度使用額が発生した。この分については、次年度において国際学会での学会報告を計画しており、そのための旅費等に使用する予定である。
|