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2021 年度 実施状況報告書

一人っ子政策が中国農村コミュニティに与えた社会的影響に関する実証研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K02108
研究機関早稲田大学

研究代表者

閻 美芳  早稲田大学, 人間科学学術院, その他(招聘研究員) (40754213)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード一人っ子政策 / 農村コミュニティ / 若者の都市移住 / 流動化 / 離農 / 稲作地帯 / 畑作地帯 / 農地運営
研究実績の概要

2012年度は、コロナ感染症で予定していた現地調査ができないなか、2020年度に現地で実施したアンケート調査成果の学会発表の公表に力を入れた。そのほか、インタビューと既存の資料を整理し、中国の高学歴の若者の農村への新規就農に関する論文を執筆した。
学会発表の一つ目は、中国の学者(2名)と日中社会学会の学会(オンライン)で行った報告である。そこでは、一人っ子政策後に生まれた若者の農地とのかかわりの違いを浮き彫りにした。すなわち、稲作地帯の農村(安徽省)では、田んぼの基盤整備が行われていない中、調査地の村の若者は出稼ぎ・都市移住(定住)に力点を置き、村で農地を耕す若者は一人もいなかった。一方、畑作地帯の山東省の2箇所の農村では、県城(県は日本の町に相当する行政単位である。県城とは県政府(地方政府)の所在地)への距離の差が一人っ子政策後に生まれた若者の営農意欲の差につながったことが明らかにした。
学会発表の二つ目は、現地調査を踏まえ、調査地の村人の「(死者を含めて)ともに生きていく」の世界観について、日本村落研究学会で報告をしたものである。一人っ子政策後に生まれた若者は都市に定住した後も、農地を「資産」としてとらえ、その運営に精を出していた。こうしたなか、夫に死別されたり、離婚を繰り返す女性の他村に婚出した後の「農地運営」に対して、なぜ村人は法律などよりも「情」に戻づいて許容したのか。学会報告では、調査結果を踏まえ、村人の世界観について内在的に理解することについて発信した。
そのほか、『日中社会学研究』29号に高学歴の若者の新規就農を流通事業型CSAをキーワードに考察した。この論文では、一人っ子政策後に農村で生まれた若者の都市移住が進む一方、出身地が都市・農村を問わず、高学歴の若者が農村に新規就農することを可能にさせた仕組みについて明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

新型コロナウィルス感染症のため、中国への渡航が制限され、当初予定していた現地調査ができないことが、主な原因である。

今後の研究の推進方策

新型コロナウィルス感染症がまだ収まらないなか、今年も中国の農村での現地調査ができるかどうか、先が見通せない。仮にコロナウィルス感染症で現地調査ができなくても、どのように研究を前進させるかについて、対策を立てる必要がある。
そこで考えたのは、オンラインによる聞き取り調査である。中国現地の関係者の協力を得て、Zoomなどを利用して調査地の村人に聞き取りを実施し、現地調査できないなかにおいても、研究を前進させたい。
もう一つは、「一人っ子政策後に生まれた若者の都市移住」というキーワードを生かし、日本に来ている中国の留学生に聞き取りを行うことを考えている。一人っ子政策後に生まれた農村の若者という一括りのなかに、1980年代生まれ、1990年代生まれ、2000年代生まれがある。これらの若者は、出産の年代によって、農村の近代化の程度および学校教育にともなう広域移動から受けた影響が異なるはずである。フィールドの調査地を日本に移し、なおかつ、一人っ子政策後に生まれた農村の若者の広域移動を視野に入れることによって、農村の若者の都市移住・越境をサポートする家(jia)の果たす役割、およびその過程において家(jia)と村落コミュニティとの緊張関係を浮き彫りにさせることができると考えている。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルス感染症で当初計画した中国への渡航ができないなか、今年度で支出しなかった旅費などの諸費用200,390円を、繰り越し金として次年度に使用する計画である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 中国におけるCSAの展開にみる若者の農村への「越境」-流通事業型CSAの取り組みを事例にー2022

    • 著者名/発表者名
      閻美芳
    • 雑誌名

      日中社会学研究

      巻: 29 ページ: 88-102

    • 査読あり
  • [学会発表] 人・農地の流動化にともなう中国農民の農地に対する意識変化2021

    • 著者名/発表者名
      閻美芳
    • 学会等名
      日中社会学会
  • [学会発表] 生活論からみた中国農村の人びとの生活合理性――都市化・流動化に生きる山東省閻家村を事例に2021

    • 著者名/発表者名
      閻美芳
    • 学会等名
      日本村落研究学会

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公開日: 2022-12-28  

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