最終年度は中国農村の現地調査を実施し、以下のことが明らかになった。すなわち、一人っ子政策後に生まれた一人っ子は、村から1時間以内の小都市に移住する人が多い。そのため、一人っ子は小都市に移住した後も、農地管理や親の介護、村での人間関係の維持に力を入れる傾向があることが明らかになった。今後、ARSA International Conferenceなどの国際会議で研究成果を報告する予定である。 この研究は新型コロナウィルスの影響を受け、当初の計画通りに実施できなかった。中国に渡航できないなか、申請者は現地の協力者に調査を依頼した。これをもとに、2022年に単著論文「中国におけるCSAの展開にみる若者の農村への『越境』-流通事業型CSAの取り組みを事例にー」(日中社会学研究29号)と、2022年に出版された『生活者の視点から捉える現代農村』の第四章、「生活論からみた中国農村の人びとの生活合理性―都市化・流動化に生きる山東省一農村を事例に―」を執筆し、一人っ子政策後の中国農村コミュニティの社会変容を捉えた。申請者は途中で調査の目的を修正し、調査対象を日本に越境する中国の一人っ子に変更し、調査を実施した。その成果は「中国 IT 人材の越境コミュニティの考察 ─埼玉県川口市芝園団地で暮らす中国 IT 人材の親世代の役割に着目して─」(閻美芳 2023)の論文として掲載された。 そのほか、中国の一人っ子政策後の農村コミュニティの変容について、英語で出版されたEVERYDAY LIFE-ENVIRONMENTALISM:COMMUNITY SUSTINBILITY AND RESILIENCE IN ASIAという本の第7章に、“PUBLIC(gong)” as Village Norm:Urbanization and Community Pesponse in Chinaで掲載された。
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